生ごみで元気野菜づくり!を提案に
生ごみ減量方策を求めて、昨年10月に、マレーシアの北クチン市の関係者数名が、財団法人地球環境戦略研究機関(IGES)の紹介で“NPO法人大地といのちの会”事務局を訪れて研修を受けました。そこで当会の技術や普及方法を知って、この方法なら自分たちの国でも普及できるかもしれないと感じたようです。今回現地に直接来て欲しいとの要請を受け、1月29日より、北クチン市へ、生ごみ減量の助言に行ってきました。
ただ、もう一つすぐに気が付いたのは、町中にごみが散らかっていることです。大量ではないのですが、町中のどこも、道脇という道脇はすべて、一片の包装袋、1個のペットボトルが1〜数メートル間隔に置いてあるといった感じなんです。市民みんなで拾ったら数時間で町中がきれいになってしまうくらいの量ですが、とても目立つのです。どうして拾わないのですか?と聞いてみましたが、ごみ拾いは下賤なものがすることといった感覚もあるらしく、またみんなが捨てるので拾っても同じことと思っているようでした。同行したIGESの方に聞くと、小さい時からこの町で育ち、このごみがあることに違和感を持たなくなっているからだろうとのことでした。だからこちらの人が日本に来ると、まず町全体にごみがないのにびっくりするそうです。昔の日本人が築き上げてきた日本の環境と日本人の感覚をあらためてありがたく感じました。
悩みは同じ、ごみの減量化
私からの提案は、まず家庭の生ごみを各家庭内で有効活用することの重要性。そのためには、市民にごみ減量を呼び掛けても、減量というだけではイメージ的に楽しくないこと。生ごみを使うと今まで以上に美味しくて栄養たっぷりの野菜ができるということを前面に出して元気野菜づくりを普及すると、結果的にごみ減量が一番達成できるのではないかと説明しました。
そこで、虫が同じ野菜でもえり好みしていることがわかる写真を見せ、農薬不要のおいしい野菜が育つかどうかは土で決まり、いい土かどうかはそこに育つ雑草を見たらほぼ想像がつくこと。そして、生ごみや雑草堆肥を使うと、そんな最高の土が素人に簡単にできること。日本でも、そんな美味しい野菜づくりを農家ではなく一般市民が生ごみを使って育て始めていることを説明しました。農業関係者がいなかったことが残念ですが、みなさん半信半疑というか、7割が信じて3割が疑っているようでした。(続く)
よしだ・としみち NPO法人大地といのちの会理事長。1959年、長崎市生まれ。九州大学農学部大学院修士課程修了後、長崎県の農業改良普及員に。96年、県庁を辞め、有機農家として新規参入。99年、佐世保市を拠点に「大地といのちの会」を結成し、九州を拠点に生ごみリサイクル元気野菜作りと元気人間作りの旋風を巻き起こしている。2007年、同会が総務大臣表彰(地域振興部門)を受賞。2009年、食育推進ボランティア表彰(内閣府特命担当大臣表彰)。長崎県環境アドバイザー。主な著書は「いのち輝く元気野菜のひみつ」「生ごみ先生のおいしい食育」「まるごといただきます」など。
北クチン市 ボルネオ島の北西部に位置するサラワク州の州都、クチン。街の中央に蛇行するサラワク川が流れ、この川を軸に街が形成されている。川を境に北がマレー系の北クチン首都特別市、南側が商業地区で中国系の人々が暮らす南市で、人口はあわせて47万人。面積約431平方キロメートル。気候は、年間を通じて気温は23℃〜32℃の常夏である。11〜2月は熱帯モンスーンの影響を受け、雨が多い。日本との時差は−1時間