EM20年の歴史が詰まった大会に

「第20回全国EM技術交流会中国大会inひろしま ―EMと共にふるさと創生―」が、3月12日に広島市南区民文化センターで行われ、約550人が参加しました。この大会は、年に1度全国のEM活動者が一堂に集まり、自然から学び、美しい地球を子孫に伝えることを目標にEM技術の研鑽を積むもの。20年目の節目にあたる今回は、世界で最初の原爆でふるさとを失い、そして見事蘇った都市・広島で、真に力のあるふるさと創生について学び合いました。広島県立吉田高等学校神楽部による神楽の奉納の後(タイトル写真)、EMでふるさとの自然を再生し、街づくりに大きく貢献している中国地方5県の代表者が事例発表を行いました。

1990年代、瀬戸内海の赤潮のため漁業が危機に見舞われた時にEMが使われ、その成果が全国の川や海の浄化活動のさきがけとなったこともあり、事例発表者はみなEMの増やし方や使い方には精通したベテランばかり。実践者にとっては、EMの歴史と実績を振り返る機会に、はじめてEMに接した人たちは、新鮮な驚きに満ちた大会となりました。最後に比嘉照夫全国EM普及協会会長が、「EM=有用微生物は自然のしくみそのものであって、EMを信頼して創造的に使えば、ふるさと創生はどこでも誰でも実現できる。我々の目標であるEMの社会化も、あと一歩まできている」と20年間の歩みを総括しました。また、海水、炭などを使うことで、EMの活性化がすすみ、高品質なEMボカシやEM活性液になること。急速に栄養が失われている日本の農地や海には、鉄などミネラルの補給は火急の課題であり、同時に電子の整流化が進み、抗酸化力が高まると述べました。
EMの持つマイクロコイルを通り抜けると、電子の流れが整えられ、様々な抵抗が減って、生物や物質に使えるエネルギーを賦与する状態になること。

<事例発表>



EMが農業・福祉・環境をつなげている


事例1
EM自然農法を基とした
自然循環型地域社会の構築を目指して


自然農法試験農場・渡部農園
渡部 敏樹(鳥取県)

銀行から出向した日本食品(株)でEMと出会う。会社がEMを販売していたこともあり、EM自然農法による実証農場を開始する。雑草、落ち葉、生ごみなど植物由来の肥料と海藻を使用し、土の威力を高めることで、病気や害虫に強い作物を育ててきた。地元で希望があった会員制の自然農法園「さかい夢の浜」を60歳以上の高齢者20名で立ち上げた。現在の会員数は62名。半数は子供に安心・安全なものを食べさせようと参加した30、40代の子育て世代。70aの農園では、市内の業者が家庭の生ごみ、食品残渣、剪定くずなどを基につくる有機肥料と、中海(なかうみ:日本で2番目に大きい汽水湖)の海藻及びEMボカシT型、EM活性液を作物に合わせて適宜使用している。高品質の野菜が収穫され、おいしいと評判に。畑の土は、第1回世界土壌生物オリンピックに応募したところ、多様性に富む土壌と評価された。 また、中海の再生を目指す認定NPO法人自然再生センターの活動に加わり、鳥取県と島根県の連携事業の「海藻類の回収と栄養塩循環システムモデル構築」事業を担当。中海漁業協同組合が海藻の回収し、社会福祉法人養和会F&Y境港が肥料を製造している。その肥料は、家庭菜園愛好者だけではなく専業農家も使用している。

【比嘉教授講評】
渡部さんが、EMに出会って人間関係をつくり、地域社会に貢献する姿は、高齢化時代の模範的な生き方だ。次のステップは、耕さないですべてEMに任せ、種を蒔いたら後は収穫するだけの効率の良い農業をいかに確立していくかだ。




たい肥は県内だけでなく、県外からも注文多数


事例2
生ごみの減量と堆肥を活用した地域おこし


元船穂町長 
土井 博義(岡山県)

旧船穂町は、岡山県南西部に位置し、編入合併により倉敷市となった。町長時代には、まちづくりの基本理念を「生きがいを創造するまちづくり」・「循環型社会の構築」とし、質の高い生活環境の創出を政策課題として、町政の推進にあたってきた。1996年、ごみ問題を解決するため、農業残渣と家庭の生ごみをたい肥化するため第3セクターを設置。焼却の経費600万円を節約した分をシルバー人材センターの作業員の人件費にあてた。各家庭に無料で配布するEMボカシは農業公社と婦人団体が製造。たい肥は、ぶどう栽培農家などが使用している。行政と町民の協働で、循環型農業が実現し、現在では10人のニューファーマーが誕生している。また、環境改善と財政改革の一貫として、集落排水施設の終末処理場の汚泥処理にEMを投入している。生きがいセンター(社会福祉協議会)では、EM活性液を製造し、消費生活問題研究協議会の女性メンバーが各家庭に無料で配布している。

【比嘉教授講評】
EMを活用した町づくりの先駆的存在。やっかいな生ごみを有効利用して、経費を削減し、その費用で雇用と同時に地域の人たちの生きがいを産み出す。この積み上げてきた実績は、これからの地域再生の模範となる。




ストレスのない馬たち


事例3
「障がい者とともにEM」
いわみ福祉会での取り組み


社会福祉法人 いわみ福祉会 かなぎライディングパーク
大石 寿 (島根県)

1974年に『浜田地区手をつなぐ親の会』(現在の『浜田市手をつなぐ育成会』)が中心となり知的障がい者更生施設「桑の木園」を設立した。設立当初より障がい者が地域で普通に暮らし、普通に働く環境を作ることを目指す。
@ EMボカシづくりは、生活介護事業所「桑の木園」での生産活動として1996年より取り組む。地元園芸愛好家への直販に併せ、浜田市環境課と共同で「生ごみリサイクル」啓発に取り組む。市民が手軽にEMを利用できるように市のごみ袋配布(販売)ルートに「EMボカシ」を載せて市内全域に販売網が広がっている。
A EMを活用した養鶏は、1994年頃より鶏舎内にEM活性液の散布による環境の保全に併せて、飼料にもEMボカシT型を配合し、鶏の健康改善に努める。近年は浜田市との協同で、給食センターより出る残菜をEM処理し、養鶏飼料としてリサイクル利用。この養鶏場からできる鶏糞たい肥は、良質肥料として有機農業に最適と人気が高く、施設でも露地野菜栽培に活用している。
B 2013年より、乗馬施設「かなぎライディングパーク」の経営を始め、現在17頭の乗用馬を飼育し、施設内にEM活性液の定期的な散布をしている。身体的、精神的にデリケートな面を持っている馬だが、EMの活用で環境が改善され、健康状態はすこぶるよい。馬が落ち着いている様子やニオイのない清潔な厩舎に来場者は驚かれ、喜んでいただけている。さらにこの馬糞たい肥は、有機JAS農家に好評。
【比嘉教授講評】
みんなで考え、協力して地域に役立つしくみを広げているのはすばらしい。ことに乗馬施設は、健康と癒しの空間として期待したい。福祉施設が、EMを活用して耕作放棄地を畑に変える事例も出てきている。情報交換をして、施設でのEM活用を広めたい。

【比嘉教授講評】
みんなで考え、協力して地域に役立つしくみを広げているのはすばらしい。ことに乗馬施設は、健康と癒しの空間として期待したい。福祉施設が、EMを活用して耕作放棄地を畑に変える事例も出てきている。情報交換をして、施設でのEM活用を広めたい。

【 いわみ福祉会 かなぎライディングパーク 】
http://www.iwamifukushikai.or.jp/kanagiriding.html




イワシの水揚げも復活した


事例4
周防大島の現実と
微生物との取り組み

周防大島を有機の島にする会
会長 浦上 卓三(山口県)

山口県漁業協同組合安下庄支店青壮年部による『瀬戸内海再生プロジェクト・イン・安下庄』と『周防大島を有機の島にする会』について紹介したい。浦上個人が1998年からEMによる浄化活動を開始し、16年間の成果かイリコの漁獲量が大幅に増え、取扱高も増えた。その後、全国各地で海の浄化活動を行う仲間から、フルボ酸鉄の効果を知り、漁協青壮年部と農協婦人部が米糠、木炭、鉄粉、光合成細菌、EM活性液などで『鉄炭入り米糠発酵資材』(EMボカシ)を造り、海に投入。その結果、魚や貝のエサとなる海中のプランクトンが、投入前よりも大幅に増えた。この『瀬戸内海再生プロジェクト・イン・安下庄』の活動は、水産庁補助金事業となっている。
「周防大島を有機の島にする会」は、『豊かな里海は豊かな里山から』の理念で設立。有機農業の普及・新規就農者支援・有機野菜等のマーケットづくりを中心に、理想の生き方を求めて島に移住してきた人たちへの支援活動も行う。この事業は、町づくり活動支援事業として採択され、地域の人材育成、住民参画の機運を育むと期待されている。

【比嘉教授講評】
瀬戸内海の浄化活動の実績は、その後の水質浄化活動の礎となった。その経験にプラスした資材は効果が高く、本気でやれば魚介類の生産高は増加することは間違いない。周防大島が、有機の島となることも夢物語ではない。




名産になった神石高原ポーク


事例5
EM腐植たい肥でできた
総合リサイクルループ


株式会社 中國開發(神石エコファーム)
専務取締役 池田 博信(岡山県)

神石高町にある総合循環型リサイクル企業。EMを活用して産業廃棄物処理、食品リサイクル、養豚・堆肥事業を行っている。山林チップ、食品リサイクルと養豚を組み合わせ、黒麹とEMを使って、リサイクルループを構築した。
たい肥の特徴として、@無臭である(逆に消臭効果がある)、A発芽率100%、BCO2を大量に発生するが、酸素消費量は少ない、C水があれば熱を出し続ける。D抗酸化作用が強い(土中殺菌作用がある)。E酸化還元電位が低い。山の土に近い、腐植化が進んだたい肥といえる。このたい肥で作った野菜を分析すると、抗酸化力が大幅に増加し、日持ちが抜群に良い、成長が早い、サイズがそろう、味もよいという結果だった。高品質の野菜ができた結果、食品会社からの残渣と豚糞がたい肥となって農家へ、野菜が食品会社へと循環することが可能となった。さらに神石高原町と福山市の協議で、神石町産のオーガニック野菜を福山市の一部小学校の給食に出すことが本年度より始まった。将来はすべての学校に供給できるようにと提案されている。有機農家、医者、大学医学部、分析機関の有志が研究協議して実現させたこの取り組みにも協力していきたい。このたい肥は『森と小豚の恵み』という商品名で道の駅、直売、アマゾン、ヤマダモールで販売。悪臭がせず、細かい大きさに選別してあるので撒きやすいと好評だ。

【比嘉教授講評】
ますは壮大なロマンを描き、観察眼をもって事に当たり、ひとつの産業として成立させていることは賞賛に値する。不飽和脂肪酸が多い豚の油から高品質の化粧品をつくることができる。こうした多角化を考えていけば新しい展開がはかれる。農業―環境―健康をキーワードに世界に誇れる産業をまざして、地域貢献してもらいたい。

【 株式会社 中國開發(神石エコファーム) 】
http://chugoku-kaihatsu.co.jp/

EM技術活用交流会 中国大会 2016

【 当大会の詳しい資料はこちら】
● EM技術交流会事例集 中国大会 2016
http://www.yuuki-yasaidukuri.com/item.php/_/32016






<2016年4月5日>



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