鬼怒川の決壊で甚大な被害を受けた関東・東北水害から2か月が経過。被害の大きかった茨城県常総市でNPO法人NPO緑の会(取手市・恒川敏江理事長)が行っているEM活性液散布が消臭と洗浄効果を発揮して住民から喜ばれている。当初、口コミで広がったこのボランティア活動が取手市民新聞や茨城新聞で紹介されると問い合わせが相次ぎ、学校など大がかりな散布も行われた。
恒川理事長は「困っている方がいたらご連絡ください。お役に立てればうれしいです」と呼びかける。災害時のEM活用は、過去、東日本大震災でも効果を発揮した実績がある。中でも宮城県気仙沼市では、市の要請を受けたEMボランティアが市内全域にEM散布して効果をあげた。海外においても2011年に起こったタイ国の大洪水の際には国策としてEMが活用された。
効果は口コミで広がった
恒川理事長が4人のメンバーと共にEM活性液(1次培養液の100倍希釈液)を持って常総市入りしたのは9月16日。決壊した鬼怒川から約4キロ地点の同市上蛇町の民家からの要請だった。支流の小貝川が決壊して床上浸水した家屋の周辺には防疫のため消石灰が撒かれたものの、悪臭が漂っていたからだ。
ところがEM活性液散布後、「ニオイがなくなった」と喜ばれ、このことをきっかけに口コミでEM効果が広がり、民家だけでなく仮設ごみ置き場や墓所、公民館などにも散布を行った。
このたびの被害は鬼怒川だけでなく支流の川にも拡大し、同市十花町地区に住む根岸利雄さん方は、自宅から約500メートル先にある八間堀川が2か所に渡って決壊したため1階部分が床上2メートル冠水。稲刈り前の水田は全面濁流に覆われてしまった。
「逃げ出すのが精いっぱいでした」と話す根岸さんが避難場所から自宅に戻れたのは5日後で、母屋をはじめ、敷地内にある長男、次男宅、長男が営む自動車整備工場とお客さんから預かっていた数台の車も無残な姿を見せていた。
水が引いた後、一帯には防疫のため消石灰の散布が行われていたが、根岸さんは散布を断り、かねてから使用していたEM散布を依頼。 結果、「完璧だよ!ニオイがなくなった。ありがたいよ」と喜びを表した。
学校再開に向けて消臭・洗浄
10月に入ると常総市立大生(おおみ)小学校(鈴木保幸校長・児童114人)から、1階校舎全域やグラウンドに散布の要請があった。泥水が校舎の床上約2メートルまで及び、児童たちは4kmの市立五箇小へ移動して授業を受けている状況。ボランティアによる1日100人体制で片づけは終了したが、最後に残ったのがニオイの問題だった。
浅岡国夫教頭は「前任地のプール掃除にEMを使っていて良さは分かっていたので、説明すると校長も理解されました」と即決。浅岡教頭自身、悪臭とカビのニオイでアレルギー症状が出て、マスクを離せなかったが、自宅を散布してもらいニオイがなくなり、楽になったため「来春の卒業式は何としても体育館で迎えさせてやりたい。そのためにはまず、ニオイをクリアして授業再開のめどを立てたい」と期待した。
散布の翌日、浅岡教頭からNPOに連絡が入った。「ニオイがなくなりました。体育館への散布もお願いします。この結果は校長会や教頭会で報告したい」恒川理事長は「子供たちが気持ちよく過ごせるようにお手伝いさせていただきます」と語った。
拠点のある取手市から4tトラックにEM活性液を仕込んだ1tタンクやポリ容器、動力噴霧器を積んで、毎回1時間余りをかけて現場へ駆けつける同緑の会だが、活動には県内5地区にあるNPOグループも参加。「緑の会というより、トータル的に県内みんなで声を掛け合って、実践していきたいと考えています」(恒川理事長) なお、散布で必要なEM資材は、NPO法人地球環境・共生ネットワーク(通称U-ネット・東京都港区)が行っている東日本大震災の復興支援活動支援金から捻出されている。