塾生と講師たちが舞台に

家庭菜園ファンが熱心に聴講
EM有機農業実践塾公開授業(主催:NPO法人EMネット神奈川)が10月12日、神奈川県鎌倉市の鎌倉商工会議所ホールで行われました。開会に先立ち、中村聡一郎鎌倉市議会議長が松尾崇市長のお祝いのメッセージを代読、鎌倉市における海岸の浄化活動などの報告がありました。

この農業塾は、2008年から主に家庭菜園を行う市民を対象に自然農法を基盤としたEM技術を習得する目的で行われています。比嘉照夫教授は、21年前から鎌倉市や横須賀市の有機農家の指導を行い、同塾の発足当初から名誉顧問に就任しています。今年度の第6期生は、男性6人、女性7人の13人。公開授業では、藤沢市の常野寿一さんが塾生を代表して体験発表しました。続いて、ゲストの高坂早苗さんがミニ講演を行い、ごく普通の主婦がEM生活のエキスパートとなり、米と大豆を自給するまでの経緯を熱く語りました。高坂さんは、「EM生活へようこそ」の著者で、EMを親しみやすく紹介し、若い主婦に絶大な支持を受けています。最後に比嘉照夫教授が「地球蘇生におけるEMに果たす役割」と題して特別講義を行いました。

体験発表要旨

妻においしいと誉められた!
常野寿一 (神奈川県藤沢市在住)


自己流から脱却した常野さん

年間50種の野菜ができる農園
エンジニアを3年前にリタイアして、本格的に家庭菜園に取り組み、200坪の土地に年間50種の野菜を栽培しています。ところが、妻に「あなたの野菜の味はいまひとつ」と酷評されたのを期に、「野菜の基礎知識から、トマトやキュウリなどの定番野菜や珍しい野菜の栽培方法まで身につき、安全でおいしい野菜がつくれるようになります」といううたい文句に惹かれて、日本園芸協会認定の「美味安全野菜栽培士」に挑戦しました。もちろん、優秀な成績で資格を取得しましたが、知識はたっぷり仕込んだものの、いざ実践してみても、あまり変化はありませんでした。

そうこうしているところに長年EMをお掃除などに使っていた妻から、「EMを使ったら」と進められて、EM有機機農業実践塾に入塾しました。ここで、自然農法士の佐藤亘市先生やトマト生産者の小泉章さんらに出会って、EM農業実践者のエッセンスを教えてもらい、自己流農業から脱却。目からウロコの連続でした。また、4%にしか過ぎない大豆の自給率や、安全か確認できない遺伝子組み換え種子の問題などを知ることで、農薬や化学肥料を使わない家庭菜園の社会的な意義をも学びました。EM経験暦1年なので、失敗の連続ですが、自然農法の種から育てたスイカが、「これどこで買ったの、おいしい」と妻に誉められ、長年の夢を叶えることができました。知人や友人にも、「おいしかった」と言われるのを励みに、EMで家庭菜園を続けていきたいと思っています。


ミニ講演要旨

ばい菌大嫌い主婦がEM大好きに
高坂早苗 (東京都練馬区在住)


EM生活を発信する高坂さん
大学卒業後すぐに結婚し、3人の子どもを持ちながら、仕事と家事に追われるワーキングマーザーとして多忙な生活を送っていました。当時は、ばい菌が大嫌いで、家には殺菌剤や殺虫剤、合成洗剤がいっぱいでした。

ところが、家の建て替えをしている時期に3番目の1歳の子どもが気管支炎で入院。その後、薬を飲ませてもすぐに病気になり、なにが問題か考えざるを得なくなります。いろいろと勉強するなかで、EMに出会い、家中にEMをバンバンとまくようになりました。"空気が変わって気持ちがいい"というのが最初の印象でした。また、スナック菓子から、リンゴやサツマイモなどを使った手づくりのおやつに変えると子どもたちが甘いものを欲しがらなくなり、なかでも保育園を3分の2欠席していた三男は、小学生の高学年になると皆勤賞をもらうまでに健康になりました。「食は、栄養ではなく微生物の生命力をいただくことで、身体が満たされる」と知り、これをきっかけに微生物と共存するライフスタイルが始まりした。その生活方法などをブログで発信し、さらに「EM菌家事日記」を出版するまでになりました。

米と大豆があれば生きられる


地元でも話題の微生物田んぼ
5年前から千葉県匝瑳(そうさ)市で、冬期湛水(とうきたんすい)不耕起栽培による米づくりを始めて、米と大豆を市場に依存しない生き方の実践を行っています。冬期湛水不耕起栽培は、稲刈り後、藁の散らばる水田に米ヌカ、ボカシ肥、ミネラルなど微生物や土壌生物のエサになるものをまいてから湛水する方法で、土ごと発酵が起こり、土の表面にトロトロ層が形成され、耕起や代掻きをしないで田植えができることで注目されています。冬には湿田となり、春以降には微生物からイトミミズ、カエルなど多様な生物の宝庫となり、絶滅危惧種の赤蛙も姿を現しました。また、雑草の種も発酵されて発芽せず、夫婦ふたりの草取りは、20〜30分で終わります。機械が入らない山間の小さな田んぼのため、すべて人力での作業ですが、この経験が"素人でも鍬1本でお米がつくれる"という大きな自信につながっています。

しかし、2011年3月の原発事故での放射能汚染を考慮して米づくりを一時中止。翌年は土から200bq/kgを検出するも、マルチン・ルターの「明日世界が終わるとしても、わたしはリンゴの木を植える」という言葉に従い、自己責任で米づくりを再開しました。ちなみにその年の玄米への移行セシウムは不検出でした。畦に植えている大豆は、20bq/kg。味噌や醤油にすると2〜4bq/kgという結果でした。今年も、種籾をセラミックスでまぶし、田んぼには米ヌカと東京の自宅から運んだEM活性液を手作業で散布しました。稲刈り後、天日干しを行い、脱穀は足踏み脱穀機を使います。この方法でも、5年間収量は減っていません。

また、2年前から10反の田んぼを借りて、仲間たちとOutput NPO SOSA PROJECT(そうさプロジェクト)を立ち上げ、約100人が年間20日間、週末ファーマーとして関わっています。また、私たちが借り受けている田んぼで、うつ病患者の自立支援企業が田んぼプロジェクトをスタートさせ、農作業をすることで、不眠や冷えが解消されるなど好評です。こうした活動の影響か、40代の女性たちが古民家を借り受け、匝瑳市に移り住み、アースビレジが現実化してきました。もちろん、彼女たちもEM生活をしています。 水と食とエネルギーを自給し、お金に依存しない生き方が、生物多様性を回復させ、世界の食料問題を解決し、平和な世界をつくることにつながると信じています。そして、すべてEMに私が使われていると感じています。


特別講義要旨

有用微生物群EMに感謝を
比嘉照夫 (琉球大学名誉教授)


未来のビジョンを語る比嘉教授
21年前、神奈川での講演会で私に質問した小泉章さん(NPOEMネット神奈川理事)は当時高校生でしたが、今ではEM活性液のパイオニアになっています。そのことがEMの歴史であり、EMの実力といえます。また、開発から33年、農は国の基という理念のもとで、EMが国を救うという使命は果たしたと確信しています。そのエッセンスは1990年発刊の「微生物の農業利用と環境保全―発酵合成型の土と作物生産 (自然と科学技術シリーズ・農文協)」にすべて記してあり、今でも1文字も訂正の必要がありません。農業書としては異例の15万部のベストセラーで、今でも有機農業入門書として読み継がれています。ぜひ、これから農に触れる人は読んでもらいたいと思います。

簡単にいえば、微生物の密度をあげて土の機能性をあげることが大切で、具体的には、“EM活性液を悩んだらまく、継続してまく、たくさんまく、乾かないようにまく、畝間にもまく”につきます。その過程でジャッジしても意味がなく、まして化学肥料の代替手段としてとらえることはできません。まったく新しい発想の下でしか成果が出せないということをよく認識してください。


初心者でもよくわかる1冊
遺伝子組み換え作物は、従来の化学肥料、農薬の上に栽培するもので、自然のしくみに逆らうものであり、農業が今よりも悪循環に陥ることになるので、基本的に賛成できません。自然のしくみを最大限に生かす自然農法をはじめとする有機農業への転換こそ、世界的な食料危機に対しても対応できます。

微生物叢(そう)=マイクロバイオームで、すべての環境が決まることは、今では当たり前のことになっていますが、善玉菌を優位にする方法は、EMしかありません。その多くは、嫌気性菌(空気が嫌いな菌)なので、酸素の多い地球上では、環境も健康も、自然に任せていては、崩壊の系に進むしかありません。望ましいマイクロバイオームにするためには、あらゆる生活の場面でEMを使うこと。EMのミッションに気がつけば、高坂さんのように未来を創造する人になって世界平和の構想までもできるのです。たくさんの人がEMに触れて、その役割に気づいて欲しいものです。


なお、EMネット神奈川では、2014年度第7期塾生の募集も行っています。お問い合わせは、http://emnetkanagawa.web.fc2.com/まで。

2013年10月28日

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