会場となった法政大学市ヶ谷キャンパス

地道な実践報告があったシンポジウム
国際有機農業映画祭2012(主催:国際有機農業映画祭運営委員会/法政大学サステイナビリティ研究教育機構)が、12月16日に法政大学市ヶ谷キャンパスで開催され、全国からおよそ800人が参加しました。この映画祭は、有機農業を広く伝えるために国内外のドキュメンタリー映画を一堂に集めたもので、6回目となる今年は2会場で計12作品を上映しました。

今回のテーマは『こんな世の中、ひっくり返さなあきまへん』。古くから伝わる農業技術の“天地返し”は、耕地の表層と深層を入れ替える作業で、表層の害虫や病原菌を退治し、弱った土の力を取り戻すという狙いがあります。3・11以降、大企業の利益を優先し、個人やいのちの営みである農業をないがしろにしていると感じる人は多くなりました。『こんな世の中、ひっくり返さなあきまへん』には原発事故への反省もないまま、再稼働を急ぐ現代社会にこそ“天地返し”が必要だというメッセージが込められています。

スクリーン1では、枯葉剤、放射能、有機水銀、農薬の被害の実態などをテーマにした作品上映後のシンポジウムでは、農地の放射能汚染に有機農業技術を使って立ち向かう福島県の有機農家・菅野正寿さん(福島県有機農業ネットワーク理事長)、長野県上田市で地域おこしを行う古田睦美さん(長野大学教授)、市民メディアを立ちあげた白石草さん(Our Planet TV)が、当事者意識から発信する、しなやかな世直しを報告しました。

スクリーン2では、有機農業の世界をテーマに、アンコール上映の「土」(韓国テレビ制作)など3作品のほか、初上映の2作品、「地域のタネを守る ベトナム・ムオンの人々」(2011年/日本作品)、「探そう!地元のオーガニック野菜」(2009年/アメリカ作品)を上映。会場から人が溢れるほどの盛況ぶりとなりました。

今回は大学での開催ということもあり、例年に比べ、20代・30代の参加者が多くなりました。初めて映画祭に参加した30代の女性は「原発事故により生産者と消費者というつながりを断ち切られて、対立せざるを得なくなってしまったということを新聞などで読み、分かったつもりではいたが、現実は想像以上に深刻。原発の抗議行動の規模は縮小しつつありるが、まだ何も解決されていない」と感想を述べていました。映像を通して、現代社会が抱える矛盾と、自然のしくみに学ぶ有機農業の意義を伝える映画祭の役割が、ひときわ鮮明となった1日でした。

注目された在来種の展示

2012年12月30日

外部リンク
国際有機農業映画祭


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