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歴史と文化とEMと
第9回EMサミット近畿in奈良



サミットが開催された「なら100年会館」


近畿をはじめ全国各地から大勢が参集した


「EMは地球を救う役割を担うものである」と語る比嘉教授


視察ツアーでは、参加者が鏡池にEM団子を投げ入れる催しもあった
11月22日、「第9回EMサミット近畿in奈良」〔主催:NPO法人地球環境・共生ネットワーク(以下U―ネット)〕が、なら100年会館で開催され、全国からEM実践者はじめ約1100人が参集した。国内4事例と海外2事例が発表されたが、中でも華厳宗大本山東大寺を擁する敷地10万坪の景観管理にEMを導入した東大寺庶務執事の成果報告には注目が集まった。

庶務執事は、「遷都1300年、青々とした若草山の丘はここ数十年で急速に悪化してしまった。あらゆる手を使って回復を試みたが、EMを活用して自然は自らの力で甦ることが分かった。これから、100年、200年先を見越して豊かな自然を基盤にした東大寺を守っていきたい」と話し、満場の拍手を浴びた。
また、世界遺産登録をめざす京都府の天橋立での取り組みも発表された。

EMの開発者である比嘉照夫名桜大学教授は、「歴史的建物はしっかりとした土壌の上に築かれて、綿々と受け継がれていく。歴史と文化そのものの美しい自然を取り戻すことこそ、日本を甦らせる道だ」と述べ、「EMならばそれができる」と結んだ。なお、発表の合間に、「なら100年会館こどもお能グループ」の子どもたちが、オリジナル新作「善財童子」を上演し、参加者は日本古来の文化を楽しんだ。

翌日には、庶務執事が取り組み状況を説明し、比嘉教授が解説する東大寺視察ツアーが行われた。100人を超える参加者は、東大寺でのEM活用に関わるU−ネット奈良の後藤和子さんと技術協力している(株)EM助っ人ねっとの岡宏典さんとともに境内を回り、各EM活用場所での説明に聞き入った。

事例① 京都府「天橋立・阿蘇海の環境浄化で、世界遺産登録をめざして」
丹後Uネット・天の橋立を守る会理事 吉田令一



EMでの浄化活動が進む天橋立
天橋立は、宮津湾と内海の阿蘇海を南北に隔てる全長3.6kmの砂州。一帯には約8000本の松林が生え、東側には白い砂浜が広がる。砂州の幅は最大170m最小20mほどで、松島・宮島とともに日本三景の1つとなっている。しかし、砂州の侵食により、縮小・消滅の危機にある。ダムなどがつくられ、山から海への土砂供給量が減少したためと言われている。また、松には松食い虫が大量発生し、一時は立ち枯れして全滅の危機に瀕した。

これらの問題に対して、阿蘇海側の地域では、官民協働の機関などが環境改善、海岸の清掃活動を行っているが、平成19年から、自治会主体の「文殊まちづくり協議会」が、阿蘇海に流れ込む文殊どんぶち池にEM活性液19トンとEM団子8000個を投入。観光協会、婦人会、漁業組合などを巻き込んで活動した結果、どんぶち池の水が澄み、ヘドロが削減、船底につくフジツボが減少した。また、府中地区のだんご川にも自治会、婦人会、小学生らが参加してEM活性液やEM団子を投げ入れ、川の浄化に取り組んでいる。今後は世界遺産を目標に池や川からEMを流す阿蘇湾ジャブジャブ作戦を行う予定だ。

事例② 和歌山県「EMと共に有機農業15年の歩み」
紀州大地の会代表 園井信雅



ミカンの大産地有田でも稀な有機農家
「紀州大地の会」には、有機JAS認定農家21軒を中心にEM活用農家約70軒が参加。米は、味度値平均80以上で県内屈指のレベルの米として好評。150世帯と産直提携を結び、東京の2社48店のオーガニックスーパーにも出荷している。野菜は、グリーンアスパラやトマトの連続栽培を可能にした。特産のミカンは取引先のスーパーでお歳暮ランキングのトップになったこともある。。地元再生処理業者と協働でEMボカシU型を製造し、農家に提供。有機農家の省力化とコストダウンを実現させている。その結果、有機農家への参入者が増えると同時に有機農業を下支えする家庭菜園実践者も増加している。

市民活動としては、「和歌山EM活用研究会」を発足させ、EM研修会やごみ減量研修会を行い、婦人団体や環境NPOとの交流をしている。そうした活動に対して、平成18年には第5回和歌山県環境大賞を受賞。環境教育に関しては、50校の小中学校でEM環境学習を実施し、プール掃除を行った学校は9校になる。これらの多方面での活動を通して地域社会にEMカルチャーを根付かせ、生態調和型のエコロジカル文明社会を創造したい。



タッパー容器使ったユニークな育苗法
事例③ 兵庫県「オープンガーデンで花と緑の輪を」
NPO法人北摂EM研究会 中井哲男

専門の園芸技術を駆使して、キッチン容器(タッパー容器)での播種と育苗づくりを開発。台所でできるユニークな花づくりはNHK「趣味の園芸」でも取り上げられた。

この方法の利点は、①家庭内環境が発芽に良い、②ザルを使うことで熱湯処理を行うことが簡単にできる、③移植の失敗がない、などで主婦に好評。この方法にEMを組み合わせる実験を行い、健康な苗づくりをすることができることを実証している。平成19年地元の兵庫県三田市に、三田花とみどりのネットワーク環境緑花部(グリーン・フィンガーズ)を設立して、新三田駅ロータリーのガーデニングを行う。枯れ草を倒して、米ヌカをまきEM活性液をかけて堆肥にするなど、環境にやさしい循環型の公共緑化を行っている。

事例④「東大寺・池の浄化と松の蘇生」
華厳宗庶務部長・東大寺庶務執事



東大寺の至るところでEMが活用されている
東大寺は、標高140m、高低差50mの若草山のなだらかな丘陵地帯にあり、面積は約10万坪。境内の豊かな自然は奈良天平の時代から営々と受け継がれてきたが、ここ数十年の間に土の保水力の低下、酸性雨や黄砂による建物への影響、さらに池の水質悪化、樹木の弱体化、奈良のシンボルである鹿の糞尿の悪臭問題など問題は山積。自然にかなった方法で境内の環境を改善したいと各方面に情報収集していた。

そのころ、奈良市の河川課から雲川の浄化にEMが使われているのを知り、半年間かけて調査を行い、平成19年からEMによる環境改善プログラムをスタートさせた。1トンタンクを境内に設置し、現在では3人の職員のEMチームが活動している。主な取り組みは、

  • 池の水質浄化…上部に位置する大湯屋池から長池を経て最下流の鏡池へEM活性液が投入。開始わずか3か月を過ぎたころ、鏡池の大腸菌がゼロになった。悪臭は解消し、水質が改善されている。
  • 松などの樹木の蘇生…年2回EM活性液で溶いたEMセラミックスを木の根元に塗布。若葉が増えて、樹皮の若返りが見られる。
  • 鹿の糞尿悪臭の緩和…週1回、ニオイ消し用にアレンジしたEM活性液入りタンクを軽トラックに積んで、最も鹿が集まる南大門周辺を散布。散布後2か月くらいでニオイが軽減。
  • ホタルとカワニナの育成…EM団子やEMで処理した野菜屑を小川に投入。大群のホタルの発生が見られた。
  • 土壌の団粒化促進…水はけの良い土へ再生、崩落を防止する目的でEM活性液を散布。緑化にも役立っている。
  • 修二会(お水取り)の生ごみリサイクル…期間中に発生する野菜残渣をEMで肥料化。カワニナの餌や植栽の肥料に利用。
    となっている。
これら取り組みで、本来の美しい景観を取り戻しつつある。EM一滴一滴が土を豊かにしてくれたことを実感している。同じ環境問題を抱える和歌山県の高野山金剛峯寺や香川県の善通寺などもこの方法に興味を示している。これからは、県や市と一丸となって奈良公園全体の環境保全を行っていきたい。

 関係記事
 世界文化遺産・東大寺におけるEM活用

海外事例① ペルー「貧困農家対策プログラム」
BIOEMSAC社営業部長 フランシス・レイエス



現地視察した比嘉教授と現地スタッフたち
南アメリカ大陸の中央部に位置するペルーは、国民の約40%が貧困農家で、中でもアンデス山岳地帯の住民約70%は貧困層。そのうちの半分は日々の生活にも窮している。その原因は、国が農薬の使用を推奨したため小さな集落にまで農薬が普及していたが、近年の石油の価格高騰で農薬の価格が上昇し、農民の生活がさらに貧窮。都市部への人口流出が大きな社会問題となっている。

この問題を解決するために立ち上がったのが、EM製造会社のBIOEMSACと今までは農薬を推奨していた政府機構Pronamachs。2005年から1年間かけてPronamachsの組織の80人がEM技術を習得し、EM農業普及員となった。2007年からはその普及員たちが、アッシュ山岳地域1万2000人の農家に、EM活性液のつくり方、活性液を活用した堆肥や液肥づくり、EMを使ったバイオ肥料づくりなどを指導した。その結果、ジャガイモ栽培農家では、1ha当りの収量20〜30%上昇し、病害虫は減少。化学肥料の使用量は80%減少となった。他の農家も総じて、①収穫量が多くなる、②化学肥料の使用が減る、③農家の収入が上がる、④農家の生活が向上するなど、好循環が生まれて貧困解消に役立っている。

海外事例② コロンビア「カヒカ市の生ごみ堆肥化プロジェクト」
財団法人FUNDASES代表 アミルカル・サルガード




EM処理された生ごみは、堆肥として再生したり、直接農地に入れたりしている
コロンビアでは、98行政区のうち29地区でEMによる生ごみ回収プロジェクトを実施している。そのうちの1つ、カヒカ市は人口5万5000人。埋め立てていた生ごみが原因で悪臭をはじめとする衛生問題が発生していたが、2008年からEMを導入し、市が市民にEMボカシとバケツを提供して生ごみリサイクルをスタートさせた。

各家庭で生ごみをEM処理し、市が週1回回収して、有機肥料として再生している。この生ごみリサイクルの推進のために、FUNDASESがEMインストラクター養成プログラムを作成。活用実績の1つとして、市は高校生生活2年間に義務づけられている奉仕活動に、1人の学生が25軒の農家をEMによる生ごみリサイクルで指導を行うプログラムを組み込んだ。学生440人が指導した農家数は1年で1100人となる。

学生たちは、農家に生ごみ堆肥化が必要な現状の環境問題を伝え、EMでの生ごみの堆肥化や液肥の使い方までを指導する。この取り組みで、住民の意識改革が起こり、住民参加型のプロジェクトにまで発展した。各家庭でEM処理をしっかりやらない場合は、罰則として回収代金が上がるが、きちんと実行した人には回収代金を据え置きされ、市から掃除グッズがもらえる表彰制度もあり、市の生ごみリサイクルは順調に進んでいる。

(2009年12月11日)

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