「善循環の輪の集い」は、全国各地で活動するEM実践者(平成21年9月現在会員団体・人数、969団体・約20万人)の事例発表会で、平成19年から毎月、各都道府県1か所の予定で催されている。今回で30回目の開催となる。また、昨年から「集い」に先立ち、「花のまちづくりセミナー」が開催されるようになった。さらに、今年から「集い」の中で、医療法人「照甦会」の先生の講演も行うようになった。
午前中行われた「花のまちづくりセミナーin伊勢崎」では、比嘉照夫名桜大学教授の講演「環境にやさしい花のまちづくりの進め方」に続いて、「花にときめき、人がきらめき、心をつなぐまちづくり」(粕川フラワーロードの会・高橋美律子代表)と「無農薬で環境に負荷をかけない庭
五十嵐清隆市長は「集い」の冒頭で、「これからの農業は安全・安心で生産者の顔が見える農産物の確保が大事で、地元の農産物が揃う直売所は市民の評価を得ています。農業と環境問題に取り組んでいる皆さんの活動は地域興しにもなっています」と歓迎の挨拶をした。
事例発表では、足利市の葉鹿エコクラブに所属する子どもたち6人(葉鹿小6年生)やEMネット北関東、伊勢崎有機農業研究会の発表が行われた。いずれも教育や農業の現場で営々と築いてきたEM活動の実績が地域を活性化する原動力になっていることを示す内容になった。会場ロビーに設けられた販売コーナーでは、葉鹿エコクラブの子どもたちの手づくりEM石けんや同クラブ10周年記念誌が飛ぶように売れていた。
各発表要旨や比嘉教授講話要旨などは以下に掲載。
「花にときめき、人がきらめき、心をつなぐまちづくり」高橋美津子(伊勢崎市)
花の力でごみの不法投棄を防ごうと、8年前粕川フラワーロードの会(会員60人)を結成して、全長34kmの粕川の土手に花を植え続けてきた。次第にごみを捨てる人はいなくなり、地域を巻き込んだ花のまちづくりへと進化していった。四季折々に咲く花と人とのふれあいが、仲間を増やし地域を元気にしている。
「無農薬で環境に負担をかけない庭づくり」山中ユカリ(伊勢崎市)
8年前、自宅の新築を機に庭づくりに開眼。木や種々の草花、約70種類のバラを無農薬栽培している。当初は、農薬や化学肥料を使ったが、2年目に「自分の庭も地球の一部」と気づき、健康な土づくりで健康な庭づくりをめざした。竹酢液にニンニク、唐辛子、乾燥ドクダミなどをブレンドした自然農薬を手づくりし、根気よく使い続けた。この間病害虫は増え続けたが、4年目ころからミミズが増え、水はけが良くなると病害虫の姿が消えた。
比嘉教授講評
群馬県は、県民参加のボランティア体制が整ってきているので、これから楽しい花のまちづくりができるのではないかと大いに期待される。 高橋さんたちの取り組みは、花を使った環境づくりで地域をよくしていこうという住民ボランティアの行動が地域を元気にしている。宿根草や花木を合わせて取り入れると雑草対策にも効果的だ。 自分の庭も地球の一部という山中さんの発想は、個人のがんばりが社会のための存在になっている。庭づくりの工夫では、雑草や剪定枝を肥料として循環させるとさらに楽しくなる。
比嘉教授講話要旨
我々のねらいは経済成長ではなく、最高に幸福度の高い国を創って、世界貢献をすべき。EMを使うことで、川や海をキレイにして農業を活性化し、自然を甦らせることができる。あらゆる場面で楽しみを見出し、自分の生き甲斐にして、その結果が国や地域に貢献し世界貢献につながるのだとイメージして、大いにEM活動を楽しんでほしい。
講演要旨
医療法人「照甦会」沖縄照甦クリニック医師 杉本一朗
日本で保有するMRI、CTは、ヨーロッパすべての国の総数より多く、世界中がうらやむ国民皆保険制度など、医療制度・技術は世界トップクラスと言える。しかし、現状は病気にかかる人は増え続けている。WHOが発表した世界のガンの死亡率の推移を見ると、先進国は下がっているのに日本だけが伸びている。1950年には全国で6万人がガンでなくなったが、昨年は34万4000人で、半世紀で約6倍に増えている。
アメリカとヨーロッパが好転したのは、77年代に発表されたマクガバンレポート※が発端で、これ以降アメリカは病気を自己責任として捉えるようになった。これを欧米も受け入れて国が国民に自己管理を促すようになった。結果、90年代前半からガン死亡率が減少した。注目すべきはキューバで、ソ連が崩壊した後アメリカの経済封鎖を受けて医療や農薬、化学肥料、食糧も入ってこなくなったため、国策で各家庭に有機栽培を奨励したことと予防医学を教育できる医者を増やしたのが功を奏して平均寿命が延びていると言う。
予防は最善の医療である。病気にかからないため、またかかったとしても自然治癒力を取り戻すことが治療につながる。そのためには、①良い食材で腹八分目、②EMライフ=甦生型ライフ、③電磁波に注意、④人間として生きていく上での目的意識を持つ、などを心がけてほしい。
※アメリカ上院栄養問題特別委員会が7年の歳月と国費を費やして1977年に発表したレポート。アメリカ経済を脅かしている膨大な医療費の原因を追求。慢性的な心臓病やガンの元凶は食生活にあるとし、決して薬では治らないと指摘した。
事例発表要旨
「環境教育と地域の協働活動」葉鹿エコクラブ(栃木県足利市)
「群馬県の活動から…高崎市、太田市、榛東村」EMネット北関東事務局長 萩原伸夫(高崎市)
群馬県には農業分野でEMを活用しているベテランが多いが、近年は環境分野でボランティアの活躍も盛んになっている。
「養豚から有機農業・環境浄化活動に広がるEM」伊勢崎有機農業研究会事務局 浮塚一雄(伊勢崎市)
(有)宮田ブリーディングは、EMを活用することでニオイの問題をクリアーして地域社会との共存を図っている。常時約4500頭を飼育するが、飼料にEMボカシを添加して良質な肉質と評判。また、糞尿は固液分離して糞はEM発酵堆肥として有償供給し、尿は標準活性汚泥方式とEMで浄化、活性化したものを調整池に送り、一級河川に放流している。調整池の活性化した豚尿はEM豚尿浄化水(環境浄化水)として約100人の市内外の農業者に無償提供されている。
将来的には、良質な堆厩肥の不足が見込まれることから、廃枝葉などの資源を再利用した発酵堆肥づくりを推進する。また、農業以外にも地域の用水路や道路の側溝、湖沼の浄化にも取り組み、住民に喜ばれている。
葉鹿エコクラブの活動を通して子どもたちは、生きる力を育み、自己管理力を高め、環境ボランティアとして教育とまちづくりを同時に行った。これぞ教育の原点だ。学校の子どもたちが社会の一員として責任を果たしているケースで、素晴らしい教育効果をもたらしている。
畜産から出る糞尿は、EMでレベルアップをして堆肥になり、それを使うことで農業も良くなる。さらに環境浄化水(豚尿浄化水)が流れた川もキレイになる。宮田さんのところでは、調整池の上澄み液より底部のヘドロ状の方にEMがたくさん含まれている。発酵分解を繰り返すとエネルギーが分散するが、EM密度が高く、ニオイをクリアーしたらフレッシュの方が良い。良質の堆肥が手間をかけずにつくることができる良い例だ。