同会議の会長には、「地産地消・有機農業・食育」を3本柱に掲げる「食と農のまちづくり条例」を制定した今治市の菅良二市長が就任。始めに菅市長が、「地消地産・有機農業・食育でまちづくりを行ってきた経験を同じ志の地域と分かち合い、地方から国に政策を提言していきたい」と抱負を語った。
続いて4人が基調講演を行った。農林水産省農業環境対策課の堀川昌昭課長補佐は、「有機農業技術の試験場での体系化、有機農産物のマーケット化と学校給食への導入」など国レベルでの有機農業の取り組みの現状を報告。ジャーナリストの大江正章さんは、「行き過ぎた新自由主義の結果、人・土・村それに人間の誇りの空洞化が進んでいるが、循環や地産をキーワードに有機農業的なもので元気になっている地域もある」と、徳島県上勝町などの事例をあげて紹介した。
元北海道副知事の麻田信二酪農学園理事長は、「歯止めがきかない厳しい農業の状況下であっても『土に根ざした文化』を根絶するわけにはいかない。農村の復活のカギは有機農業だ」と訴えた。学術的立場から明治大学農学部の小田切徳美教授は、「自然を活用するのではなく保全することによって経済効果をあげる第6次産業(地域資源保全型経済)が、地域を再生する」と語った。
さらに、中貝宗治豊岡市長が「コウノトリと共に生きる」と題し、絶滅の危機に瀕していたコウノトリを40年に及ぶ人工飼育を経て、人里に帰した貴重な経験をもとに「持続可能」「自立」「誇り」をテーマに「豊岡モデル」をつくり上げたことを紹介。コウノトリが大空に飛び立つ姿が画面いっぱいに映し出されると、会場から拍手が起こった。
最後に、東京都練馬区、埼玉県小川町、島根県吉賀町、宮崎県綾町の4つの有機農業推進地域の行政関係者などが取り組みを報告。有機農家の発表とは一味異なり、有機農業がすでに地域で広く認知され、その活動が地域住民の健康や福祉に貢献していることを印象づけた。
なお、翌日には、有機農業関係者らの集会「第4回農を変えたい!全国集会in今治」(主催:同集会四国実行委員会)が、今治市のテクノボート今治で行われた。
今後「有機農業推進地域連携会議」は、「農を変えたい!全国集会」と同時開催で年1回行われる予定。すでに国の施策である平成20年度地域有機農業推進事業(有機農業モデルタウン)に採択されている23団体を含む40程度の地域・自治体が参加を表明しており、これらがネットワーク化することで、有機農業の面的な広がりが期待できる。