今回は、高知県内のEM実践者たちが、環境浄化・農業2分野での事例を披露。また、環境学習ネットワーク(ELネット)代表の比嘉節子さんが、全国の小中学校で実施されているEM環境学習の取り組み状況を報告。最後は、比嘉照夫琉球大学名誉教授が、環境・農業・医療の多岐にわたる分野で活用されているEMの最新情報を盛り込んだ講演会を行った。
【環境浄化分野−発表5例】
しゃくなげ荘では、利用者と職員が地域の病院やスーパーなど20か所の生ごみを年間140~200トンも回収し、県リサイクル商品に認定されるほどの良質な堆肥を製造。行政の広報協力もあり、堆肥はつくる毎に完売となる。施設のEM担当者真鍋さんは、「回収先からは、毎日回収するので腐敗することなく喜ばれている。利用者たちが生き生きして働ける場をつくりたい」と話した。
●EM活用し町民主体に環境改善活動 こどもエコクラブ・エコ応援団婦人部世話役代表 山脇幸一氏
いの町中山地区(約200世帯)では、町民が「こどもエコクラブ(30人)」とその活動を支える「エコ応援団婦人部(20人)」を結成。犬の散歩道に生ごみ処理容器を置き、糞を入れてEMボカシで処理する「わんわんトイレBOX」や、各家庭で出る花木の残渣や雑草などを入れる「環境BOX」を設置。それらを堆肥化し環境農園で使用する。その他にも町民参加の桜のオーナー制やアルミ缶回収など工夫を凝らして多彩な活動を展開している。
●官民協働で水質浄化活動 宇佐町環境衛生推進協議会 山本幸一郎氏
●漁協女性部が取り組む環境浄化 高知県漁協佐賀町統括支所 明神里寿氏
黒潮町佐賀地区でのEM活用のきっかけは、行政の取り組みだった。平成15年に町がEM培養施設を設置。漁協女性部が運営を委託され、排水路へのEM活性液投入や、各家庭へのEM利用を広報している。地域の小中学校のプール清掃や水産加工会社の排水処理、周辺地域の漁協女性部などでもEM活用の輪が広がっている。明神さんは、「漁から帰って、着ていたカッパをEM活性液に浸けて洗うと、独特のニオイが消える」と漁師町ならではの活用法を披露した。
●EMを活用したプール清掃が全国展開 環境学習ネットワーク 比嘉節子氏
【農業分野−発表4例】
●有機農業が地球を救う 有機のがっこう土佐自然塾 山下一穂氏
●EMを15年活用し良質の牛乳と堆肥供給 岡崎牧場 鹿島利三郎氏
●薬剤師が挑むEM抗酸化力米づくり 薬剤師 下元大助氏
薬剤師である下元さんは、アトピーなど現代病に対して薬剤の限界を実感し、「これからの子どもたちには食べ物こそ大事」と無農薬水稲栽培を始めた。米づくりにおいて①土の浄化、②有機物多投の見直し、③抗酸化力をどう引き出すかをポイントに土づくりを徹底して行い、5年目で反当たり約8俵を収穫できるようになった。EM活性液散布の際に再度糖蜜を入れることで、田全体をEM発酵槽に仕立てることで抑草を可能にしている。
山下さんは、米づくり11年目。今まで米ヌカ除草やすみマルチ、アイガモ農法など様々な除草対策に取り組む中で、EMを活用した冬水田んぼや布マルチでの栽培を行うようになった。「水があれば冬水田んぼが有効。その際には秋処理で堆肥や耕起することが大切」と話した。無農薬EM栽培の山田錦で日本酒をつくっており、米に付加価値を付けた販売にも力を入れている。
比嘉教授が、各事例を1つずつ丁寧に講評し、「EMの場づくりをしていくことが大切。日常生活の中で、どのように活用していくか、自分の都合ではなくEMの特性に合わせたやり方でやってほしい」と訴えた。その後講演し、「技術革新をするには、今までの発想ではいけない。究極的には農業は種をまいて収穫するだけで良い。草を抑える技術も草を堆肥にする技術もEMにはある」と持論を展開。それを裏付ける成果が、年間6tもの収量をあげる自身のバナナ園(10a)で示されていることを紹介。観客からは大きな拍手がわき起こった。
なお、次回(2009年)は香川県で開催される。