また、招聘講演でタイ王国・国家洪水汚水問題緊急解決調整諮問委員会委員長が国家プロジェクトとして悪臭対策や水質改善にEM技術を活用した経緯と成果を紹介しました。
同フォーラムのテーマは「世界の事例から学ぶ災害復興」で、約900人の参加者は災害時におけるEM技術の有効活用を再認識すると共に緊急時だからこその国家指導力のあり方や研究者らの取り組みに高い関心を寄せていました。
タイ国の取り組み─「EM活用で費用が100分の1で済んだ」
このあと市民やグループによる事例発表(要旨別掲)が行われ、続いてタイ王国国家洪水汚水問題緊急解決調整諮問委員会のウォラヌット・ジェタムスタポン委員長による招聘講演「国家プロジェクトとして悪臭対策や水質改善にEMを有効活用」がありました。
このように実績を重ねて評価されたEM技術が、国家プロジェクトとして洪水後の清掃や衛生対策に活用され、住民から「『ご飯は1日くらい食べなくとも生きていけるが、EMがないとニオイや汚水対策ができないので生活ができない』」と言われたことなどが披露されました。
多彩な顔ぶれでパネルディスカッション
休憩をはさんで行われたパネルディスカッション「ベラルーシ共和国および福島での研究成果について」では、ベラルーシ共和国から来日したアレキサンダー・ナウモフ博士(ベラルーシ共和国国立科学アカデミー放射線生物学研究所・所長)とアレクサンドル・ニキティン博士(同研究所放射線生態学研究室・室長)、奥本秀一さん(鰍dM研究機構・研究部長)、野呂美加さん(NPO法人チェルノブイリへのかけはし代表)らをパネリストに、比嘉照夫名桜大学教授、杉本一朗医療法人照甦会理事長がコメンテーターで登壇しました。
ニキティン博士の研究は、EMが放射性セシウムの植物への移行をどうして抑制できるのかを追求し、次のような実験を通してそのメカニズムを明らかにしました。
実験は、秋まき小麦とエンバクの種を播いたポットとレタスを植えた畑で行いました。
収穫後に行った分析の結果では、ポット試験で最も放射性セシウムの移行を抑制したのは、EMボカシ処理区で、秋まき小麦、エン麦とも対照区に比べて植物体への移行を2倍以上抑制しました。EM1処理区ではセシウムの移行が対照区に比べて25%抑制されました。 レタスを用いた圃場試験での放射性セシウムの移行は、EM1をポット試験より多い回数を散布したので、その分植物への移行が強く抑制されました。
各処理区の土壌中の水溶性セシウムはEM資材を使用した処理区では2分の1に減少し、中性の塩類水溶液によって交換抽出される交換態セシウムの量は約2%減少している。植物に移行するセシウムは基本的に水溶性セシウムと交換態セシウムの2つなので、EM処理区で植物への移行量が減ったことが明らかになりました。
以上の実験結果で分かったことは次の通りで、
EM研究機構の復興支援プロジェクトの一環として、平成23年5月から福島県にてEM技術による放射能低減化試験に取り組んでいる奥本研究部長は、EMやEM堆肥を活用することにより放射性セシウムの農作物への移行抑制効果が認められ、これらの資材を活用することにより有機物循環型システムの復興と安全・安心でおいしい県農産物の復活が可能になると報告しました。
この後、㈱ホワイトマックス・増本勝久取締役会長による特別講演がありました。同社が開発したエンバランス加工は、EMが添加されていて食品の保存容器や袋に活用され商品化されています。この特異性を活かして行った実験は、「放射性セシウムをエンバランスの保存袋に入れて、牛乳と水を別々に加えて24時間後、牛乳で78%、水で81〜89%のセシウムが減少していた」と驚きの内容。増本勝久取締役会長は、長期的に継続して繰り返して実験に取り組んでいくと話しました。
比嘉教授は総括講演で「汚染地帯の復興は、その地で健康に生きられる方法があって、汚染のない健康な農産物ができることが必須条件になる。福島はあらゆる障害を乗り越えて、世界に未来を示さなければならない。北海道の面積より大きいタイ国で成功した汚染対策を参考にしてEMを思いっきり使えば必ず放射線量は下がる」と説き、「幸福度の高い社会とは、①自分で食べるものは自分で育てる②病気にならないための生き方ができる③生活の中で自己管理能力がある④人間関係を創る能力がある⑤学ぶことが好きである」と鼓舞激励しました。
事例発表要旨
EM活用は放射能対策だけでなく、EMボカシづくりや河川浄化など地域とつながる新たな活動もつくり出しています。ちなみに、施設の初年度(平成23年度)被害総額は約200万円で、東京電力への賠償請求ではシイタケ原木のみに補償の目途が付いたばかりだと言います。