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レポートその2 塩害と放射能汚染の汚泥堆肥について


貴重な体験を語る鈴木さん

津波発生から1週間の田んぼ

青々と元気に育つイネ

稲刈り直前の台風にも負けなかった

マスメディアも注目
この体験を後世に残したい
有機農家・鈴木さんのチャレンジ

東日本大震災の津波に伴う塩害などで、水田約1万5000ヘクタールが作付けできなくなった宮城県。農水省では大半の水田では2013年分まで作付けが困難になる、としていました。県では、もし作付けするとしても、「津波による泥や土砂が堆積していないこと」「代かきをするための用水施設が壊れておらず、用水を確保できること」「排水した場合、下流部に2次被害を起こさないこと」の3条件を満たすことを示し、その結果、浸水した水田の1割弱、1126ヘクタールが作付けされました。その数少ない農家のひとりが、仙台市宮城野区蒲生で有機農業を営む鈴木英俊さんです。ブログで田んぼプロジェクトを発信し続けていた鈴木さんは、ネット上では話題の人物です。

「海から2.5kmに私の田んぼがありますが、津波でものすごい被害を受けた。生まれて70年当然経験したことがなかったので、これは後世に残さなきゃいけない。稲を作る農家に何かヒントを与えたいと思った」。農協からは、「まぁ、3〜5年米は作れないよ」と言われたそうですが、EMを20年やっていた経験と、近くの川のヘドロがEM団子で浄化したのも見ていたので、この津波で田んぼに入ってきた「海から入った水には、ミネラルがいっぱい入っているから、ヘドロは宝物だ。これを微生物で分解すればいい」と確信したと言います。

このことをブログで発信したら伝言ゲームのようにEMの仲間に伝わり、ついには比嘉照夫教授の耳にも届き、EM関係者の支援のもとで米づくりが始まりした。まず、大勢のボランティアが瓦礫の撤去を手伝いにきてくれました。このボランティアは比嘉先生とてんつくマンが対談したときに話があがり、てんつくマンが連れてきたメンバーです。その数は、なんと50人以上でした。

行政などに水を流して欲しいといってもやってくれなかったので、井戸も全面的に応援してもらって設置しました。「私の1区画は30a(全部で180a)ですから、代掻き(水を入れる)前にEMをドラム缶1本ずつ、ホースをサイフォンにして流して入れた。代掻きは1回やって、その2日後にもう1度水を流した。私は、キュウリの古漬けを販売している農家だから、1日真水につけると塩分が抜けることを知っている。田んぼの塩分は問題ない。ヘドロは微生物が分解してくれる」と農家としての知恵と経験を信じたといいます。そして、稲の種を苗床11枚にまき、仙台新港から塩水を汲んで濃度を変えながら、どのぐらいの濃度で育つのか、根付くのか実験をしました。また、品種はどの品種が塩分に強いのか、県の農業改良普及員に嘱託してデータ取りを行いました。その結果は、予想外にすばらしいものでした。「今年、作付けしたい農家には、やり方をすべて公開したい。絶対に米づくりは続けられる」と稲作農家にとっては、心強いエールが送られました。

新しい価値をもつ農業へ

ところで、鈴木さんはEMを使っているなかで、化学肥料の害を知り、平成8年から手づくりの肥料に切り替えています。「化学肥料を使わず、EMボカシだけでおいしいお米がつくれる。価格は、普通のものより2倍高いが、お米はすぐに完売になる。EMで工夫してつくれば小面積でも経営は成り立つ」と強調します。さらに「農業は健康産業という捉え方をしていかなければいけない。食糧は余っているから、食糧生産というよりも、今食べているものをいかに健康によいものにするか、ぜひ消費者のみなさんも農家に発破をかけてほしい。『こんなものではだめだよと、こんなのがほしいのだよ』と。それでみんなに健康になってほしいなと思う。農家も、これからは足を引っ張り合うことはせずに共に良くなろうとしないといけない。そうしないと消費者が損をしてしまう」と付け加え、消費者である参加者にも檄を飛ばしていました。震災後、農地を集めて大規模化をはかる計画が進んでいますが、小さな有機農家だからこそできた鈴木さんの貴重な体験を、新しい農業の再生へとつなげていきたいものです。

蒲生を襲う津波
http://www.youtube.com/watch?v=Lf_kukC7UUQ&feature=fvwrel

鈴木有機農園
http://suzuki-yuukinouen.blog.ocn.ne.jp/blog/

てんつくマン http://tentsuku.com/
NPO法人MAKE THE HEAVEN理事長(有)クラブサンクチュアリ代表。環境保護運動を行うなかで、EMと出会う。東日本大震災後、すぐにボランティア活動を開始し、被災地へ励ましと勇気をおくり届けている。

 

汚泥堆肥は大丈夫か?
岩手コンポストの実験


興味深いデータが発表された

花巻市にある本社

EM活用の醗酵処理システムで廃棄物が宝物に
農林水産省は6月、放射性物質を含む下水やし尿などの汚泥を肥料の原料として利用する場合、放射性セシウム濃度は1kg当たり200ベクレル以下とする基準を初めて示しました。原子力災害対策本部は、これまで汚泥を活用した肥料などは当面、製品の出荷を自粛するのが適切」とするだけで、基準を示していなかったため、検出された汚泥をどう処理したらいいのか困惑が広がっていました。岩手コンポスト株式会社(産業廃棄物中間処理・リサイクルなど)の専務・菅原萬一さんは当時を振り返って、「昨年の3月当初はそうでもなかったが6月あたりからセシウムの話が出始め、特に下水汚泥から高い濃度が検出されるとの話で関係者は自分も含めかなり不安だった」と話し始めました。「6月まで農水省から何も基準値の処置がなかったので岩手県の方でいろいろ確認したが、500ベクレルがいいだの700ベクレルがいいだのと話は出たものの各市町村の汚泥を引き受けている関係上、あいまいな設定はできなかった。一関市や水沢市で200ベクレルほど出ていたので、それ以上はダメだろうということで、7〜8月には受け入れをストップした。盛岡市は1000ベクレルを超える地域もあったので当然受け入れをストップした」と放射能汚染のために混乱した1年を振り返りました。

セシウム濃度ND(不検出)に

ところが、6月初めにつくった資材を6月末に測定したところなんとNDになったのです。原料の汚泥1m3に対し資材4m3入れて、8月に測定すると57ベクレルでした。これをフレコンバッグに詰めて寝かせて10月下旬に測定したところNDになったということです。「比嘉先生にも報告したが、数値が減少するというのは初めての経験で驚いた」と言います。岩手県工業試験所の放射能の専門家に聞いてみたところ、「そんなことはありえない。工場のどこかに残っているはずだ」という返事だったそうです。どの放射能の先生に聞いてみても同じくありえないということでした。数値が低いことが確認されたこの堆肥は、大船渡市の魚の死骸の悪臭対策に使われました。

当社は、汚泥以外にもリサイクル基盤材ということで、工事で出てくる木や草などを堆肥化して、法面吹きつけ基盤材や土壌改良材として使っています。こちらも4月に測定すると128ベクレルあり、それに一般廃棄物も取り扱っている関係上、架線の下などの草、刈り取った草なども引き受けているので検査したところ147ベクレルあったそうです。これも堆肥化して発酵させたらどうなるかと実験すると、こちらも10月下旬にはNDになりました。現在EM研究機構が福島県富岡町でこの基盤材40リットル詰め約980体を使い、桜の樹勢回復のために試験的に使っています。「これでいい結果が出れば岩手県でも福島県でももっと積極的に活動できる」との期待感を込めていました。

なお、数値が落ち着いたこともあって、岩手コンポストでは今年1月から汚泥の受け入れを再開。3月からは通常通り堆肥を出荷ということで、「使われる農家さんみなさんに安心してもらえるように検査を続けていく」と結びました。

ポイント
①塩害はEM活性液をまくことで解決できる。
②堆肥の発酵温度が高くなること(岩手コンポストの場合は90〜95℃まで上がることもある)が大事。


(2012年3月15日)

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