同サミットの事例発表で注目されるのは「奈良の大仏さん」で知られる東大寺でのEM活用事例。境内池の水質浄化をはじめ、松の樹勢回復、トイレ浄化槽や鹿の糞尿のニオイ対策などにEM技術が活用され、成果を上げている。周辺の神社仏閣の環境整備にもEM活用の波及が見込まれ、世界文化遺産に認定されている県域での広がりに期待は高まる。
後藤さんからアドバイスを受けた庶務執事は、自らEM事例を調査。時には先進事例現場に出向くなど検証を重ね、半年後の平成19年12月「EMが環境浄化に寄与できることが分かりました。活用するからには、信じて前向きに取り組みましょう」と、EM自動培養装置1器と2次培養タンク1器を購入・設置した。
池が文字通り鏡のようにキラキラと
各池に週1回約500リットルのEM活性液を投入し続けたところ、3か月過ぎたころから鏡池の大腸菌がゼロになり、透視度も50cmに上がってきた。また、水路にEMセラミックスを設置するなど地道な作業を繰り返した結果、夏場に懸念されていた淡水赤潮の発生や藻の悪臭もなくなった。この間、ボランティアや東大寺学園幼稚園の園児らによってEM団子がつくられ、約2500個が池や水路に投入された。
これまでの成果を岡さんは、「当初は効果が出るまでに3年ぐらいかかると思っていましたが、1年を待たずに結果が出ました。鏡池は雨が降ると上流から泥水が入って濁ってくるのですが、水面の回復が早くなっています。昨年は約5000個のEM団子が2回に分けて入っているので、底泥の質が良くなっているのだと思います」と振り返る。
もともと鏡池は、日本庭園風に中の島にせり出した舞台があって、舞台の足場が見えないように、適当な濁りは必要であった。しかし、汚い時の比率が高く、濁った際の回復力が弱かった。また、ニオイに関しても、池の北西寄りに設置した水を循環させてろ過するための人工滝が、かえって底に溜まっていた藻をかき出して、腐敗したニオイを発散させていた。今年春、この場所にEMセラミックス約300kgを設置したところ、 ニオイもなくなり、水質はより改善され、透視度も50cm〜1mまで見通せるようになった。
そして、水面に細かなちりめん状のさざ波がキラキラと立つのを始終観察できるようになったが、これは水質がキレイになった池特有の現象だ。水の面に大仏殿や周辺の松が映えて、“鏡”池の面目躍如(めんもくやくじょ)となっている。なお、EM導入前と導入後の比較データは、東大寺側は外部検査機関に依頼。岡さんと後藤さんは月2〜3回池の水を採取して、透視度・水質等の解析をしている。
立ち枯れ松から新芽が…
水質改善の他にも、南大門から大仏殿に至る松並木に広がる松枯れ病や立ち枯れ松対策で、昨年は約200本に樹勢回復を試みた。幹にEMセラミックスパウダーを塗布し、根周辺や松全体にEM活性液を定期的に散布しつづけた結果、「枝先が成長し、今年の4〜5月には新芽が出てきて、新緑のニオイがしました」(岡さん) 今後も継続して年2回の処理を行うと同時に対象樹木を増やしていく予定だ。
今年6月には、大湯屋池の直下で例年にない多数のホタルの乱舞が目撃されたが、現地では、約20年前から「大仏ボタルを守る会」が活動していて、永年の保護育成活動にプラスEM投入効果が実ったと関係者を喜ばせた。また、鹿の糞尿対策で(財)奈良の鹿愛護会では、春日大社参道脇にある同会グランドにEM活性液を播いて糞の堆肥化を試行中だ。
自然環境保護を東大寺発信で
こうした東大寺の呼びかけに応じて、南都七大寺の元興寺旧境内にある十輪院(橋本純信住職)では、すでにEMを活用した池の浄化をスタートさせている。
世界文化遺産に古都奈良が認定されてから17年。しかも来年は、平城遷都1300年とともに東大寺や興福寺、法華寺など多くの寺院の創建や整備に深く関わった光明皇后の1250年御遠忌に当たる。「花の都」と謳われた奈良の都の面影が、さざ波の立つ池の面に再現されることは奈良市民だけでなく、浄化に関わった人々をはじめ多くの人々が待望したもの。
今回の「EMサミット」では、東大寺の他、京都・丹後の天橋立・阿蘇海浄化や和歌山県、兵庫県から農業・流通・ガーデニングに関する事例が報告されるなど、近畿地方の主な活動者が一堂に会するとあって、自然環境保全のうねりが大きく展開されることが期待される。
11月22日に行われる「EMサミット近畿in奈良」の詳細はコチラ http://www.ecopure.info/events/image/20091122.pdf