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自然農法とEM技術で加盟国支援
APNAN設立20周年記念式典



国境を越えた自然農法とEM技術普及活動に尽力した関係者が記念撮影


感謝の思いを述べるチョチョミン氏


APNANのあゆみを紹介するサンガッカラ氏


人材育成に貢献するカニット氏


自然農法研修会には毎回多くの参加者が集まる(タイ・サラブリ農場)


さらなる10年に向けて思いを語った比嘉会長
APNAN (アジア太平洋自然農業ネットワーク・会長:比嘉照夫名桜大学教授)設立20周年記念式典が、9月29日、熱海・救世会館で行われ、関係者らが多数集まりました。APNANは、1989年タイ国コンケンで開催された第1回救世自然農法国際会議において、アジア・オセアニア地域の自然農法とEM技術の普及を目的につくられました。現在、タイ・バンコクを拠点に、15か国において、自然農法やEM技術を通して、持続可能な農業の推進や環境汚染の解決に積極的に取り組んでいます。

式典では、関係者の挨拶に続いて、来賓として出席したミャンマー前イエジン大学副学長チョチョミン氏が、不安定な政治情勢の中でEM技術を国のプロジェクトとして導入したことを振り返り、「APNANと農業省などの支援がなければ、EMのプロジェクトはできなかった」と感謝の言葉を述べました。

また、APNANのアドバイザーでもあるスリランカのペラデニヤ大学農学部作物学科教授のサンガッカラ氏が、20年間に7回の自然農法国際会議を開催し、1992年にはIFOAM(国際有機農業運動連盟)の大会で初めて自然農法とEM技術についての科学的なデータを発表し、世界の有機農業の取り組みに一石を投じたことなど、APNANの20年の歴史を紹介しました。「今後も『APNANニュース』などを通して自然農法とEM技術についての情報を発信し、世界の人々が研修会に参加できる機会をつくりたい」と抱負を述べました。

さらに、タイのサラブリ救世自然農法センターのカニット所長が、定期的な研修会は400回を数え、あらゆる国の研修希望者を受け入れ、参加人数は6万人を超えたことを報告。現在では、自給自足を目標に農地の広さに合わせて研修ができるシステムが、国や宗教を越えてたくさんの人々に受け入れられていることを強調し、「自然に学び、土の力を最大限に活かす農法を実践できる人材の育成に貢献したい」と意欲を語りました。

その後、4人のAPNANスタッフを代表して松本潤氏が、アジア・オセアニア地域の普及状況を発表。農業だけではなく医療や環境の分野にもEM技術が活用されている国家モデルとも言えるタイや、事業として成功しているインドネシアのバリ島、政治的には難しい問題を抱えながらも自然農法のモデル農場や有機農業マーケットをつくり上げたラオスの取り組みを紹介。「各国に1か所の自然農法研修センターをつくりたい」と希望を述べて、大きな拍手を浴びました。

最後に登壇した比嘉会長は、「岡田茂吉師(自然農法の創始者)の思想とEM技術が両輪となって、農業の産業革命を起こすとともに、自分の存在が他人のために役立つ事業モデルをつくっていこう」と呼びかけ、「世界各国が情報を共有するためにも、今後もしっかりした人材の育成をはかりたい」と語りました。

なお、APNANをベースにエジプトやシリアなどの中東地域では砂漠の食料問題や緑化、塩類集積対策にEMが使われ、南米のペルーでは国の支援で約80万世帯の貧困農家がEMを使っての有機農業を学んで農村に帰り、都市のスラム化が解消されているなど興味深い事例が発表されました。

 

タイ王国
Kingdom of Thailand


EMボカシ作成の実習を行う定期国際研修会参加者

タイ国内における自然農法の普及は、1970年から始まり、EMを使用した本格的な普及は、サラブリ県にサラブリ救世自然農法センターが設立された1988年から開始されました。

サラブリ救世自然農法センターは、自然農法とEM技術のタイ人対象研修会を継続して開催しており、その研修の受講者は2009年現在までに、6万人を超えています。また、同センターでは、EMを利用した自然農法技術普及の東南アジアにおける拠点として、国際研修会も開催しており、世界35か国以上の国から2000人以上の参加者が受講しました。(2009年現在)

タイ国は世界一のEM消費国であり、東南アジアの自然農法とEM技術の普及拠点として、今後もその活動が期待されています。

インド
India


比嘉教授のインド出張、奥様と共に

インドはAPNAN設立当初、加盟国の一員であったが、種々の理由により、2000年ごろまで活動が停滞していました。2000年11月、EMRO(㈱EM研究機構)との契約を交わしたメープルオーガニック社がインド北部のデラトゥンでEMの製造を開始したことにより本格的な普及が再開されました。

その後、メープルオーガニック社を中心としたEMと自然農法普及活動は徐々に拡大しています。インドでは農業分野だけではなく、環境浄化活動においてもEMが利用されており、今後の普及拡大が期待されています。

インドネシア共和国
Republic of Indonesia


バリ島でEMを使用して栽培されたコーヒー豆

1990年代初頭よりEM技術を利用した自然農法がインドネシアに導入されました。その後、1996年には、バリ島に循環型モデル農場の研修センターが設立され、インドネシアにおけるEM普及の拠点となっています。バリ島では、農作物へのEM使用だけでなく、リゾートホテルの汚水処理、ごみ処理場へのEM使用、EM処理された堆肥の販売など、包括的なEM活用が行われ、EMのウェルネスアイランドとして発展しており、毎月のEMの製造量は50トン以上になりました。

同国では、EMを使った自然農法の普及のみならず、インドネシアの伝統的なオイルにEMを添加した、ボカシオイルや、そのボカシオイルを用いたエステサロン、EMエコツーリズムなど、独特のEM普及を行っています。インドネシア独自のEM2次製品も多数開発され、国内のみならず、海外でも好評になっています。

カンボジア王国
Kingdom of Cambodia


EMを使用したマンゴー栽培を行っている農家

カンボジアにおける自然農法とEM技術の普及は、1997年ごろより開始されましたが、様々な問題があり、活動は一旦停滞しました。2004年3月に、現地のNGOである自由クメール協会の代表が、APNAN事務所を訪問したことがきっかけとなり、同国におけるEMと自然農法の普及活動は再開されました。その後、APNANは、自由クメール協会と協力し、現地でのEMの製造を開始しました。自由クメール協会は、貧困農家を対象に講習会を継続して開催しました。その結果、カンボジアの環境省大臣から注目され、同大臣より支援を受けて、普及活動は次第に拡大していきました。APNANは、現在も自由クメール協会と協力し、EMを利用した自然農法普及活動を継続して行っています。

スリランカ民主社会主義共和国
Democratic Socialist Republic of Sri Lanka


EMを使用した自然農法野菜を栽培している農家

スリランカにおける自然農法とEM技術は、1989年にペラデニア大学作物学教授サンガッカラ氏によって研究目的で導入されたのが始まりです。その後、EM技術は1997年よりスリランカ最大のNGOであるサルボダヤ(Sarvodaya)によって本格的な普及が開始されました。サルボダヤはNGOの独自のルートを利用し、EMの販売を行うと同時に、技術スタッフにより、EMを利用した自然農法の講習会を定期的に行っています。また、APNANは、スリランカのランカ世界救世財団とも協力しながら、同国における自然農法活動を展開しています。

ネパール
Nepal


APNANのコンタクト先であるヤダフ氏(中央右)とEM及び自然農法普及の支えとなっている方々

1990年に設立された地域社会福祉開発協会(CWDS)は、持続的農業や地域開発を通じてネパールの発展および食糧確保を目的に活動を行っているNGOです。このCWDSは1996年に自己の活動に自然農法とEM技術を導入し、現在も上記の目標達成のために活動を続けています。

CWDSは、継続的にサラブリ救世自然農法センターで開催されている国際研修会に参加者を派遣し、現在は、その研修会受講者を中心に、EMを利用した自然農法が徐々に広がっています。

ブータン王国
Kingdom of Bhutan


ブータン農業省の学校農業プログラムでもEMを使用した自然農法が行われている。

1994年のキンザン・ドルジ博士(元農業省大臣)のタイ国サラブリ救世自然農法センター訪問により、ブータン王国へ救世自然農法とEM技術の概念が紹介されました。これがきっかけとなり、同年ブータン王国がAPNAN加盟国となりました。1995年、ブータン王国農業省は、APNAN、自然農法センター、EMROと合意書を結び、自然農法とEM技術の普及が本格的に開始されました。

その後、2005年に、農業省の中でもEMと自然農法技術に関心が高い学校農業プロジェクトとの間に、新たに合意書を結び、APNANと学校農業プロジェクトが協力して同国における活動を展開しています。

ベトナム社会主義共和国
Socialist Republic of Viet Nam


EM研修会に参加する婦人会

ベトナムにおける自然農法とEM技術は、1997年にベトナム科学技術環境省と自然農法センター、APNANおよびEMROの間で政府共同プロジェクトが発足し、このプロジェクトに関する合意書に基づき、普及が進められました。現在ベトナムでは、北部地域を中心に科学技術環境省の支援を受けたビナニチセンターがEMと自然農法の普及活動を展開しています。近年、ベトナムでは主に、ごみ処理場、海老の養殖などでEM技術が利用されています。

マレーシア
Malaysia


ペナン州での‘one million Apologies to Mother Earth(母なる地球への100万個の謝罪、イベント)時のEM団子投入風景

2002年からJAMOF(Japan Malaysia Organic Farmers)の澤田氏によってEMがマレーシアに導入されました。JAMOFでは、EMは主に河川浄化などの環境分野への使用が多く、その次に農業、畜産などに使用されています。

一方でマレーシアのクアラルンプールにあるマイクログリーン社は、EMの販売とともに、油ヤシ用の堆肥としてEMを利用しています。

マレーシアはタイの隣国ということもあり、近年、サラブリ救世自然農法センターで開催されている国際研修会に多数の同国のEMユーザーが参加しています。今年8月には、ペナン州で大規模な環境浄化プロジェクトが行われ、100万個のEM団子が汚泥で汚れた海に投入され、TVや新聞などでEMがとりあげられ、注目を集めています。

ミャンマー連邦
Union of Myanmar


EMを使用した自然農法を実施しているCARTCスタッフ

ミャンマーにおけるEM技術を利用した自然農法の歴史は古く、1989年にタイ国で開催された第1回救世自然農法国際会議に、イエジンにある農業研究所の農芸化学部(現在イエジン農業大学)から、チョチョミン博士と Kyaw Than 博士が参加したことから活動が始まりました。その後、チョチョミン博士がミャンマー国における普及活動の中心的存在になります。

ミャンマーにおけるEMと自然農法普及活動は、約20年間にわたり継続して行われ、その間に、4回の合意書が同国農業省と自然農法センター、APNANとの間で結ばれました。現在ミャンマーには、5つのEM製造工場があり、広範囲の地域においてEMが使用されています。また、2007年、CARTC(Central Agriculture Research and Training Center)では、EM技術スタッフを集めた研修会が行われました。長年にわたる普及の成果として、EMと自然農法技術をよく理解した優秀な人材が育ってきています。

ラオス人民民主共和国
Lao People's Democratic Republic


ビエンチャンでの有機農産物市場(EM・自然農法を実践)

ラオスでは1993年に、ビエンチャン市(ラオスの首都)とAPNANが協力して、EM技術を試験的に利用したことから活動が開始しました。1996年、共同プロジェクトの計画書(合意書原案)が作成されましたが、担当者の異動など多くの問題があり進展が見られませんでした。

2000年11月にビエンチャン市の農業林業局と自然農法センター、APNAN、EMROとの間で合意書が結ばれ、本格的な普及が始まり、現在までEMと自然農法の普及活動を同国において展開しています。

ラオスは、農薬や化学肥料の値段が高騰しており、貧困農家は、化学肥料などを購入することができません。そのことがEMを利用した自然農法を普及する追い風となっています。現在では、首都ビエンチャン市に、オーガニックマーケット(有機農産物市場)が設置され、多数の自然農法農家が農産物を市場で販売しています。

オーストラリア連邦
Commonwealth of Australia


大規模酪農家へのEM・自然農法の説明会

オーストラリアにおいては、メルボルン、シドニーを中心にEM事業が展開していましたが、2004年よりクィーンズランド州、タウンズビル市にあるVital Resource Management Pty Ltd (VRM)社 により本格的にEMの普及が始まりました。VRM社はEM発酵液肥、EM活性液混合液体クリーナー、EM1号、EMボカシ他、様々な商品を販売しています。その中でも、化学肥料や有機質をEMによって発酵させた液肥は、バナナ農家や、サトウキビ農家へ販売され、経費削減、環境保全に貢献しています。

ニュージーランド
New Zealand


リンカン大学内、オーガニックトレーニングカレッジの自然農法実践農場

自然農法とEM技術は1994年に研究目的で、マイク・デイリー氏(アグリリサーチの研究員:半官民の農業研究機関)によってニュージーランドに導入されました。

2002年1月にはニュージーランドのクライストチャーチにおいて、第7回救世自然農法国際会議が開催されました。マイク氏はNGOニュージーランド自然農法協会を通じて、EMと自然農法の普及を行っています。 また、昨年(2008年)より、EMを使用した救世自然農法のモデルとして、小規模の試験圃場が、リンカーン大学内のオーガニックトレーニングカレッジに設置されました。

(2009年10月17日)

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