――取手市での生ごみリサイクル25周年、おめでとうございます。 恒川: EMで生ごみをリサイクルしたら、地球環境のためになるとワクワクしていたのを昨日のように思いだします。最初は、2〜3人から始めた生ごみたい肥化が、今では、取手市のおよそ2000世帯の家庭の生ごみを回収するまでになりました。市民が提案し、それが事業化した生ごみリサイクルは、そんなにもないように聞いていますが、ここまで継続できたことは、比嘉先生をはじめ、会員また多くのみなさんのお陰だと感謝しています。
出来上がった堆肥は、学校の花壇などに利用されている
――生ごみリサイクルを始めるきっかけは? 恒川:平成6年1月。取手市永山公民館でEMを使った生ごみたい肥の講習会の案内のチラシを手にしたのです。以前、気功仲間がEM農法の本を読んでいたので、EMはどんなものか、大変興味がありました。その講習会は、エコピュア我孫子の盛田里津枝さんが、企画されたものでした。比嘉照夫教授の「地球を救う大変革」が世に出たのが、前年の10月でしたから、EMがどんなものか、市民も興味津々な頃だったのです。環境問題に関心を持っていたときだったので、「これだ」と思い、その年の6月、任意団体の「EM緑の会」をスタートさせました。公民館にビデオデッキを運んで、生ごみをどうやって発酵たい肥にするかの説明会をどんどん開いていきました。お庭のあるご家庭では、問題なく進みましたが、マンションにお住まいの方から、「生ごみをたい肥にしても、庭がないから使えないわ」という声が出てきたのです。
これは、困った。このままでは、せっかくボカシとあえた生ごみが、また燃やすごみに出されてしまうと。そこで、「隔週、ボカシあえを頂きに来るから続けて」というと、「それならば、やるわ」ということに。ところが、主婦の口コミはすごい!あっという間に20世帯のご家庭の生ごみを回収することになってしまったのです。我が家が造園業ということで、トラックがあったことも役に立ちました。
現在、回収作業はシルバーさんが行う
道具は揃っていたし、仕事を終えた夫(恒川芳克さん)と街を周って、生ごみを回収するのは、楽しかったですよ。しかし、時には夫から「いつまでやるんだ」と言われ、悩むこともありました。そんな時、EM緑の会の会員たちが、当番を決めて回収の協力をしてくれることに。トラックの助手席に毎回違う女性が乗ってくれることになって、夫はまんざらでもなさそうでした(笑)そして、参加世帯は順調に増えていき、それが50世帯を超えるころ、『取手市全世帯の生ごみを回収したい』との思いが強くなりました。
――市が動くまでのいきさつは? 恒川:当時、市役所から旧焼却場跡地の一画を借用し、たい肥化作業をしていましたが、回収量が増えるにつれ、道具類が必要になります。そこで、独立行政法人環境再生保全機構(旧環境事業団)に助成金を申請しました。しかし、なかなか返事がこない。同じような趣旨で応募した「たい肥化協会」には、OKがでたことを知り、意を決して思いの丈を伝えようと平河町まで出かけました。家庭の生ごみは、貴重な資源であること、焼却に比べればはるかに環境に優しいことなどを心を込めて話しました。担当の方からは、「ハイ、ハイ。お話は承りました」と無表情な反応でした。が、2日後、合格の知らせが届きました。その後も、日本たばこ産業の「がんばれNPOプロジェクト」に応募。現場調査に来られた審査員の方に「申請書の行間に志がみえる」と言われ、助成金を頂くことができました。こうした資金で、フォークリフトやベルトコンベアなどを購入し、回収の拡大をはかることが可能となりました。
生ごみ粉砕、EMボカシ入り戻したい肥を攪拌後、ワイヤーパレットへ
そして、平成13年、回収世帯が240世帯に増えたころ、市役所が5年間のモデル事業としてやっていこうと決断してくれたのです。「うまくいかなかったらやめる」ということでしたが、平成18年度から、「資源循環型社会」への施策として正式な取手市の事業となり、現在まで、続いています。この間、市長が3人変わる中で、ごみ行政は広域化となり、委託元が市から常総環境センターになりました。
積み上げ発酵中
――生ごみの回収とたい肥化はどのような方法で行っていますか? 恒川:1tトラック3台、作業員各2人で、週2回の回収を行っています。回収前日に鳥獣害対策のため、回収専用プラスチック容器を設置します。住民は、その容器に生ごみだけを入れます。たい肥場に運搬された生ごみは粉砕し、EM活性液を噴霧。EMボカシ入り戻したい肥を混ぜ、ワイヤーパレットに詰めます。あとは、微生物=EMさんにおまかせするだけのシンプルなやり方です。切り返しなどのエネルギーは必要ありません。建設費の軽減と冬場の温度管理の利点を考えて、ビニールハウスを作業場にしました。生ごみたい肥化で最も問題になりやすい、ニオイとハエの問題は、EM活用のお陰でクリアできています。
市内各地に設置されている生ごみ回収容器
――これからの夢は? 恒川:私たちの活動がここまで順調に継続できた理由は、EMの驚異的な力、会員の協力があったこと、あきらめなかったこと、だと思っています。EMに出会ったことで、生きて甲斐のある人生、納得のいく人生、そして悔いのない人生をありがたく生きていると実感していて、EMの開発者の比嘉教授には感謝しかありません。
インドのマザーハウスで生前のマザーテレサさんにお会いできた折、「私たちのやっていることは大海の一滴です。でも、あの大海も一滴からよね」という言葉をいただきました。この言葉が私の背中をいつも押してくれて、「バケツ一杯の生ごみも大海の一滴だ」と思えるのです。そして、本当に大海の一滴になれたら、こんなにうれしいことはありません。「1000年後も2000年後も、緑豊かな美しい地球であって欲しい」という思いで、さらに取手市全域の生ごみ資源化に向けて、働かせていただこうと思っています。EMさん、ありがとう!
2019年7月、全国一斉EM団子投入の日に――白鳥監督とNPO緑の会のみなさん
取材:2019年7月1日 文責:小野田