今回の特徴としては、食品リサイクル法改正等を背景に、企業の先進的なリサイクル構築の事例が数例あったこと、例年に比べて自治体からの発表や参加が多いことが挙げられます。どの地域でも循環型地域社会、低炭素社会、ゼロエミッションの観点から生ごみの取り組み事例を求めていることが伺われました。
NPOたい肥化協会理事長の瀬戸昌之氏は、開会挨拶の中で、生ごみの適正な資源化の方策として「生ごみが新鮮で異物混入のないものは家畜のエサに」「生ごみの鮮度が落ち、異物混入のないものは堆肥に」「生ごみの鮮度が悪く、異物混入があるものはバイオガスに」と述べていましたが、エサ化の事業に関しては、過去の交流会でも事例は多くありませんでした。
このような中、全体会で大変印象的だったのは、小田急グループの食品残さのリキッドフィード(発酵させた液状のエサ)で養豚し、できた肉は関連店舗で販売する「食品ループ」を実現している小田急フードエコロジーセンター(神奈川県)顧問・獣医師の高橋巧一氏の発表でした。
午後からの分科会で印象に残ったのは、第2分科会「臭いを出さない生ごみ堆肥づくり」の農業生産法人(有)アグリクリエイト(茨城県稲敷市)東京支社長高安和夫氏と、第4分科会「都会の生ごみどうする?」の埼玉県戸田市環境クリーン室クリーン推進担当副主幹吉田義枝氏の発表でした。都会では、生ごみの堆肥・肥料を受け入れる農地や菜園は少なく、臭気が許容されるリサイクル施設がない中での、画期的な取り組みです。
アグリクリエイトリサイクルシステムを利用するには、乾燥式生ごみ処理機を持っていることが条件です。生ごみは発生元の一般家庭は家庭用電動処理機で、集合住宅や学校などは大型電動処理機で乾燥させます。水分含有10%ほどになった乾燥生ごみは宅配便を利用して茨城県神栖市のリサイクル工場(池田産業)に送られます。微生物やカルシウムやマグネシウムなどを添加して「有機発酵ミネラルぼかしペレット」という有機JAS資材となり、80軒の農家で活用されます。できた野菜やお米は当然トレーサビリティが確保されており消費者に届けられています。
市民は、市から貸し出されたEMボカシ生ごみ処理バケツ(19リットル)をいっぱいにして市のフラワーセンターに持ち込むと、24本の花苗と交換できます。現在400個のバケツが貸し出され予約待ちの状態です。これまでに2万6000鉢の花苗と7トンの生ごみが交換され、人口は増えていますが可燃ごみの増加は止まっています。持ち込まれた生ごみはフラワーセンターの生ごみ処理機で肥料にされ、交換用の花育苗のほか公共花壇や屋上緑化などに使われています。さらに、フラワーセンターでは、障害者や高齢者を積極的に雇用しており、来年完成予定の大規模フラワーセンターでも100人の障害者を雇う計画と言います。環境クリーン室の吉田義枝副主幹の力のこもった報告に会場は引きつけられ、質疑が集中しました。
分科会での発表のいくつかを簡単にご紹介しましょう。
駒ヶ根市は、平成14年度から市内すべての公共施設で排出される生ごみの堆肥化事業を進めてきました。20年度からは一般家庭を対象に事業を展開しています。現在、市中心街に5つのモデル地区を指定し、320世帯が分別回収に協力しています。回収から堆肥化までを一括民間に委託していますが、完成した堆肥は希望農家や住民に無償配布。将来的には、有機栽培農家と協力した「旬産旬消」「食育」で、資源循環型社会をめざしています。
第1分科会2つ目は、甲賀市の委託を受けて生ごみを回収・堆肥化に取り組む叶口システム事業部長の井狩専二郎氏が、官・民・企業協働の堆肥化システムについて発表しました。現在、市3万2000世帯のうち7400世帯が同システムに参加、今年度末には1万世帯をめざしています。この他に、市内外のスーパー30店舗やホテル、事業所の生ごみも受け入れています。
出来上がった堆肥は、福祉施設を母体とするNPOびわ湖ベジタブルロードが野菜栽培に使用。野菜はスーパーの店頭やホテルの食材として活用され、残さは再び堆肥化されて畑に投入されます。井狩さんは、「食品ループが構築された」と言います。また、同NPO代表の米澤大氏は、「こだわった野菜づくりの目的は、障害者の雇用促進・安定です」と話しました。
神奈川県川崎市の川崎・ごみを考える市民連絡会は1992年5月に発足、ごみ減量に取り組んできました。生ごみや落ち葉、剪定枝を堆肥化して農に繋げる取り組みを続け、現在は3つのルートで農家が受け入れています。川崎・ごみを考える市民連絡会の17年にわたる取り組みの報告に対し、会場からは惜しみない拍手が送られました。
来年も同交流会は、同じ会場で、8月23日(月)に行われることになっています。