ウェブ エコピュア
EMとは?
特集・レポート
連載
投稿ひろば
用語集
FAQ
出版物のご案内
EM情報室について
リンク
サイトマップ
プライバシーポリシー
エコ・ピュア ウェブマガジン 特集
農と食と微生物を生かしたバイオマスの郷づくり ─ 山梨県笛吹市

石和温泉を囲むように広がる果樹畑
石和温泉を囲むように広がる果樹畑
山梨県甲府盆地の東部に位置する笛吹市(人口約7万2000人)では、平成19年度より有用微生物群(EM)を活用した「笛吹市バイオマスの郷づくり事業」(国の補助事業)が行われている。このバイオマスタウン事業の検討会は、県と市、JA、農家代表の計14人で構成され、EMを活用した果樹栽培農家の鮫谷陸雄さんらの実績を評価した荻野正直市長の後押しで、「EMによるバイオマスタウン構想」が実現した。

この事業は、EM活用による土づくりを中心とした環境保全型農業により、果樹面積3,000haに及ぶ「桃・ブドウ日本一の郷」を堅持し、石和温泉を中心にした「温泉郷の街」という地域の特性を生かした資源循環型社会の構築を図るもので、「木質系バイオマス(果樹せん定枝や植木屑)のチップ化」「生ごみの堆肥化」「廃食用油のBDF化」の3つを柱としている。

●EMボカシ製造にも助成

EMボカシをつくる「エコふえふき」のメンバー
EMボカシをつくる「エコふえふき」のメンバー
すでに、事業の具体的な取り組みの1つである「生ごみの堆肥化」事業では、家庭から出る生ごみのリサイクルを進めるため、生ごみ処理容器2個の購入費の半分、コンポスター上限5,000円、処理機25,000円を上限にした購入補助を行っている。また、EMボカシを製造する5人以上のグループには製造費として120キログラム約6,000円を補助。20年度では、約50団体に交付され、約8トンのEMボカシが製造された。

これらのEMボカシを製造するグループをまとめて、生ごみリサイクルネットワーク「エコふえふき」(代表:鮫谷陸雄さん)が立ち上がり、農業・環境などの学習会や社会福祉まつりなどへ参加して、市民の立場でごみ減量と生ごみの有効活用を推進している。市では、「やってみるじゃんごみ減量53%」とのスローガンを掲げ、18~22年度までに53%のごみ減量をめざしている。19年度末までに28%削減。バイオマスタウン事業の生ごみリサイクルに関連して、今年度はさらに削減する見通しだ。

●農地のない家庭のモデルに

また、生ごみ堆肥化モデル地区では、2通りの堆肥化実証事業が行われている。1つは、約60世帯の団地に生ごみ処理機「蘇生利器」を設置して、住民が直接生ごみを投入するというもの。ここでは、週平均50kgの生ごみ堆肥が製造されている。

シルバー人材センターのメンバーが生ごみを回収
シルバー人材センターのメンバーが生ごみを回収
もう1つは、生ごみを市から配布されている生分解性のごみ袋に入れ、週2回シルバー人材センターのメンバーによって回収し、笛吹市バイオマスセンターに持ち込むというもの。同センターの大型生ごみ処理機で生ごみと米ヌカ、EM活性液などを加えて発酵させ、約20日間で堆肥にする。この方法で、2地区約1,000世帯、週平均400kgの生ごみを堆肥化し、できた堆肥は市内の学校や農家に無償で提供している。

学校の給食残渣については、現在9校に生ごみ処理機を設置し、給食主事が生ごみ残渣を投入している。今後は、すべての学校に生ごみ処理機を設置する予定。また。石和温泉郷から出る大量の生ごみについてもリサイクルを検討している。

●果樹せん定枝燃やさず農地に還元

チッパーとEMを活用することでせん定枝が良質なバーク堆肥になる
チッパーとEMを活用することでせん定枝が良質なバーク堆肥になる
「木質系バイオマスのチップ化」事業では、19年度からブドウや桃のせん定枝を1~2センチに粉砕できるチッパーの助成が行われている。5軒以上の農家グループで最大50万円までで、現在88台分に交付されて稼動中。果樹農家の48%がせん定枝を燃やさずに堆肥化できるまで助成する予定となっている。

また、せん定枝をチップ化してもそのまま農地に施用すると土壌障害が起こるため、EMを培養するEM活性装置「二千倍利器」を導入。この装置で、週2,000リットルのEM活性液が製造されて、農家に毎週月曜と木曜に無料配布されている。農家などが、EM活性液を剪定チップに散布して良質なバーク堆肥づくりを行う他、葉面散布など農業全般への利用、また廃油石けんづくりなど多方面に使っている。EM活性液の製造・管理は、3人のEM農業実践者が当たっている。

●土づくり学習会と果樹の成果

これらの事業を推進するために、市では、農業委員やチッパー助成農家、認定農業者、EM活用者などに呼びかけ、地域学習会を3地区で1回ずつ3回にわたって実施した。第1回の基礎講座では、バイオマスタウン構想とEMの活用についてとその効果で、各会場約80人前後の参加者があり、第2回目の実践講座「EM農業に取り組もう」では、実践的なEM農業技術を学習。バイオマスタウン構想策定検討委員会委員でもある鮫谷さんら、早くからEMを活用していた農家が講師として活躍している。

EM活性液に痛んだ桃をつけて液肥として再使用する
EM活性液に痛んだ桃をつけて液肥として再使用する
また、バイオマスタウン事業の農産物への効果を図るため、ブドウやモモの糖度の追跡調査を行っている。数字ではでない土の変化を実感している農家は多く、例えば、県内でも大規模なある遊覧観光園では、数年前から観光客のブドウやモモの食べ残しや食事の残り物を専用生ごみ処理容器で一次発酵させて、その後コンポストで熟成させた堆肥を落葉後に果樹園にすき込み、さらに剪定チップを前面に敷きこんでいるが、土がフカフカになり、樹勢が良くなっているという報告もある。

EM活用の実績を地域に広げる桃農家の鮫谷陸雄さん
EM活用の実績を地域に広げる桃農家の鮫谷陸雄さん
3年目に当たる今年度は、バイオマスセンターの建設に向けて先進地の視察など情報収集にあたる。24年度には、生ごみの95%と果樹せん定枝の48%の利活用をめざす。鮫谷さんは、「地域の生ごみや有機物の循環をしていくには、農家が安心して使える堆肥をつくることが大切です。この地域では、早くからEMによる農業利用が進んでいるので、農家にメリットがあることは保証できます」と強調する。その裏づけとなる、3地区で行っている生ごみ堆肥化の実証実験も今年が最後となるが、市担当者の雨宮さんは、「この構想が実現できるようにしっかりと検証したい」と意欲的だ。

バイオマスタウン事業を通し笛吹市では、市民の知恵と専門家の技術を分かち合い、日本一の循環型農業観光都市をめざしていく。[2009/5/7]


事業の詳細「笛吹市バイオマスタウン構想」
http://www.biomass-hq.jp/biomasstown/pdf22/22_1.pdf


戻る

トップページ | EMとは? | 特集・レポート | 連載 | 投稿ひろば | 用語集 | FAQ | バックナンバー | EM情報室 | リンク集 | サイトマップ