連載



山下一穂 土佐自然塾塾長・山下農園代表
第19回 有機農業ってなに?



人生はバクチだから、自分のことばかり言っていたらツキが逃げる。だから自分のことはさておいて、子や孫たちや他人のことを第一に考える。人から笑われようと、騙されようと、気にせず、馬鹿みたいにお人好しになって、自分の信じた道を生きよう。さすれば、そのうち神さんが味方に付いて、ツキと流れはこちらに寄って来る。でも、行為に対する結果は、良いことも悪いことも、長い時間をかけて、音もなく後ろから忍び寄ってくるものだから、なかなか目には見えないし、手ごたえもない。

田舎からの国づくりは、若者たちに任せた
田舎からの国づくりは、若者たちに任せた

しかし心の力を抜いて、なおかつ積極的に信じ、静かに行動し続けることで、ツキと流れは、間違いなく「心の平安」という形で、こちらにやって来る。そして「困らない程度に」お金も入ってくる(きっとそうに違いない・・・多分)。それを待ちきれなくて、喉から手を出して、結果を取りに行ったら、逃げるに決まっている。そしてまた初めからやり直しと言うことになる。情けは人の為ならずと言うではないか、真理は面倒くさいものなのだ。

では、具体的には何をすればよいのだろうか。僕は農家だからまずは農業の再生に力を尽くしたい。もっと具体的に言えば、有機農業の技術普及と小規模農業の再生。そして、志を同じくする人たちとの連携。さらに言えば、人の親でもあるから、当然子供たちの幸せを守りたい。そのためには森や、川や、海を再生し、誰にとっても食と健康とのもとになる豊かな自然を取り戻したい。林業も水産業もしかりである。それは、日本人として、国民として当然の責任だと思う。そんな、あれもこれも、何もかも、できるのでしょうか。

できます!(このきっぱり感が、なにより大切)。

里山の小さな農業が、日本の未来を拓く
里山の小さな農業が、日本の未来を拓く


潔く、人のために
ツキは後からやってくる

農業もバクチだからやはりツキが大切。少しずつ農薬を減らして、いずれは有機農業に、などと、その思いっきりの悪い、優柔不断な考え方が、ツキを逃がしてしまうし、流れも悪くなる。徐々に農薬を減らして、いずれは有機農業なんて言って、実際有機農家になった人なんか、見たことない。有機農家の中にも、良い物を作るための土づくり技術や、理論の習得、額に汗して働くことなど一番大切なことをさておいて、やれ、アブラムシにはお酢がいいとか、対処療法ばかり考える人や、ロクなものができていないのに、売り先ばかり考える人がいるけれど、それもダメ。その技術と勤勉さをなめたセコイ態度が、どだいバクチになっていないのだ。農業は種を播くまで、植えるまでが勝負、ときっぱり腹を括り、そのために学び続け、働き続ける人には必ずツキが巡ってくる。奮闘及ばず病虫害が出たら、それは自分の負け、まだまだ未熟だと潔く結果を受け入れ、さらなる勉学に励めば、精進すれば、やがて遅ればせながらも、必ずツキが回ってくる。そして、だからこそ、結果的に良いものができるし、信用もされ、売り先も増える。

できるか、できないかではなく、きっぱり「やる!」と決めることでツキを呼ぼう。その結果がどうであろうと、それは誰のせいでもない、全ては自己責任なのだと、主体性を持った、お人好しに、自信を持ってなろうよ。

 雨の中で黙々と農作業。その勤勉さが技術力を養い、マーケットの信用を得る
雨の中で黙々と農作業。その勤勉さが技術力を養い、マーケットの信用を得る


健全な意識が、
良い政治と行政を作る

太陽のエネルギーの循環、と言う自然界の仕組みの中で、全ては繋がっているのだから。それを感覚的に捉えて、日常生活に反映させれば、必ず世の中は良い方に変わる。そして「国民一人一人が、国家を形成する一員である」と言う当事者意識と自覚を持って、意識を変えれば、世の中必ず変わる。それは行政の仕事だ、政治の役割だとあきらめてしまったら、国づくりを他人任せにしてしまったら、日本人の精神性を解体しようとした、戦後GHQの思う壺、狙い通りとなり、その論に与するだけになる。「景気のためには原発やむなし」「子供の声がうるさいから、保育園は作らせない」「報道の自由が脅かされても、俺には関係ない」と、なる。自分のことばかり考えていたら、必ず「背に腹は代えられない」意識と行動になるのだ。これを政治と行政でやろうと思っても、時代に合った法律を作っても、それを権力で執行しようとしても、普通の人々の日常生活における意識が変わらなければ、どだい無理な話。なぜなら、人々の意識の総体が反映されて、結局、政治と行政というカタチになっているのだから。

人の為に頑張るのは大いによし、けれど、自分のために頑張るのはだめ。個人主義、競争社会クソくらえ!この際、スパッと思い切っちゃいましょう。太陽のエネルギーを軸に全てはつながっていて、それが多様な生命と共に循環するという真理を軸とすれば、人間が中心という傲慢さがなければ、あの忌まわしい全体主義も台頭できない。だから、世のため人のためにと、馬鹿みたいにお人好しになって、意識を変え、行動しても、何の問題もないのです。

子供のころ、9時に寝かされた後、襖を隔てた隣の部屋で、両親が、仲間と楽しそうに、宴を楽しんでいるその笑い声を、心地よい子守唄に聞いていた僕の原体験が、他人の幸せを喜ぶ性格を作ってくれたとすれば、その頃からぼくはツイていたのだね、きっと。もともと、自分のことより、人様が喜ぶ顔が嬉しい、メデタイ性格に恵まれていたのですね。

と、今頃気が付いた。

そんなことより、自分の生活が先。

さあ、どうでしょうか、賭けてみますか?



★★★ ワンポイントアドバイス ★★★

キュウリやトマトやナスなど、苗をたてるとき、子供の頭をなでるように、毎日苗の頭を優しくなでてやる(接触刺激)と、徒長(ひょろひょろと軟弱に伸びること)を防ぎ、がっしりした良い苗を作ることが出来ます。さらに、苗が大きくなって来たら、どの株にも満遍なく光が当たるよう、間隔を広げても、その効果が高まります。
 頭をなでなでしてやると、しっかりした苗になる
頭をなでなでしてやると、しっかりした苗になる

(2016年5月10日)

やました・かずほ
1950年 高知県生まれ。28歳まで東京でドラマーとして活動。その後帰郷し、高知市内で学習塾を経営。体調を崩したためにあらゆる健康法を試してみたが、最終的に食と農の問題に行き着く。
1998年 本山町にて新規就農。2006年4月 高知県と地元NPO黒潮蘇生交流会(山下修理事長)との協働で「有機のがっこう土佐自然塾」設立し塾長に就任。8年間で100人を超える塾生が学ぶ。この経験をベースに有機農業参入促進協議会会長として新規就農者の拡大に東奔西走中。著書に「超かんたん無農薬有機農業(2010・南の風社)」、DVD「超かんたん無農薬有機農業 ムービー編Vol.1 これでどうじゃ」(2010・トランスウェーブ)、「無農薬野菜づくりの新鉄則(2012・学研パブリッシング)」。

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