星寛治※さんにお会いして、「なるほど」と思った。
存在そのものが説得力なのだ。
「農の営みは、心を深く耕してくれる」と。
では、かずほ流「なぜ有機農業なのか」を述べてみよう。
有機物が多様な生命と共に循環していく自然の仕組みを、凝縮、短縮し、その再生産力と経済性を両立させる技術が有機農業技術である。これは全ての農業の基本でもあるし、健全な地域社会の指標ともなる。
戦後、日本全国に急速に拡大した科学的近代農業は、戦後の食糧難を乗り越え、農家を重労働から解放し、食料の安定供給に寄与した。種苗メーカーや農機具メーカーの研究開発は、さらなる安定生産や、農作業の効率化をもたらした。だからどちらが良いと言う単純な話ではなく、双方の良いところを取り入れ、農家の経済性と消費者の嗜好性を満足させ、環境にも優しく、健康に良い、ハイクオリティと安定生産を両立させる、ハイレベルな次世代農業を作りましょう、と言っているのだ。
そして、今や恒常的に襲ってくる異常気象も忘れてならない。豪雨、水害、猛暑、干ばつなど、急激な環境変化に強い環境(山の保全)や田畑と栽培方法が求められている中、固定種の保存や、不耕起栽培など、その分野で研究がすすんでいる自然農法も忘れてはならない。有機農業における微生物の研究も取り入れ、それぞれの分野の成果を出し合って、力を合わせて新しい技術を作ろうではないか。自分たちだけが正しいと内部凝縮して、他を批判し、お互い体力を消耗し、農業の再生を遅らせている場合ではない。
星さんの言葉をもう一度お借りしよう。「(有機農業運動は)利益追求が目的化される企業経営とは異なり、儲からなくても人々の生命をしっかり支える環境と、景観を守り、そして子孫に豊穣の大地を残すことを本命としてきた」。
全くその通りだと思う、しかし儲からなくては(食えなくては)農家の存続はあり得ないし、農家無くして農業もあり得ない。小規模農業も地域社会も、その再生はいまだ遥か道遠しである。では、どうすればよいのか。
有機農業にこだわった消費者と農家だけの小さな関係ではなく、普通の消費者に受け入れられる、開かれた有機農業が多様な農業と共存し「企業は儲からないけれど、農家は儲かる」状況が生まれて、初めて農業と地域社会の再生は叶う。単純に「有機農業さえ広がれば」では、ダメなのだ。
夢を見るのも楽じゃあない。
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