連載

宮原光恵 北海道・朱鞠内で暮らす 第9回 有機JASを取得しました!

昨年(平成30年)、農業を始めて22年目にして、ようやく有機JASを取得しました。新規就農当時から有機栽培で野菜をつくってきましたが、有機JASを取得しなくても作物の販売が出来ていましたので取得してきませんでした。お客様や取引先に「取得した方がいいか」と何度か打診した経緯もありますが、有機JASよりも少しでも安く提供してもらいたい、というご意見が多かったこともあり、これまで延び延びになっていました。

オーガニック表示で、安心して食べてもらう

北海道・朱鞠内,宮原,自然塾

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今回、膨大な書類の作成や徹底した管理、記録が必要となる有機JASを取得したのには、いくつか理由があります。その一つは世界中から日本に訪れる海外の方に、私たちの作物をオーガニック表示して安心して食べてもらいたい、という思いからです。

"えいやぁっ"と有機JAS取得に乗り出しましたが、作成する書類の多さに愕然。使う肥料メーカー全部に資材証明をもらい、認証団体に確認していただきます。でも、取り寄せた資材証明で通る資材と通らない資材があったり。一番苦労したのは、EMボカシメーカーが使っている糖蜜の証明でした。最終的には、原料となる甜菜の種子の証明のため、フランスのシンジェンタからの証明書を取り寄せることになりました。これまでも可能な限り資材証明は取り寄せて確認していましたが、いろいろと知らないこともあり、気が付かなかったこともあり、あらためて有機JASを取得するには徹底的に調べる必要があることを再認識させられました。
シンジェンタ:スイスに本拠地を置く多国籍企業で、農薬や種子を主力商品とするアグリビジネスを展開している。

資材の管理、種子、すべての作業、どの機械をいつどこで使ったのかをはじめ、有機管理圃場とそうではない圃場で共有する機械は、畑に入る前に機械やタイヤの洗浄も必須事項等々。

出荷管理もすべて記載する必要があり、初年度は我が家のやっている農業に合わせた書式を作り出すことが必要でした。正確には平成29年度からやっているのですが、自分たちの管理しやすい書式をあみだすのは、難しかったですね。「これで良し」と思っても、次々に不都合が生まれてきて、そのたびに書式変更を届け出ます。50種類を超える品種を作付けている当農園では、誰かの作った書式では全くもって上手く管理できないのです。

有機JAS取得でメリットは?!

北海道・朱鞠内,宮原,自然塾

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有機JAS法が出来た当初から、どうやったら管理できるのか考えたりしたことがありましたが、まったくわかりませんでした。今回本気で取り組んでみて、正直なところ、記録するための事務員さんを一人雇いたいほどの量です。かといって有機JASを取得したことによって、人手が確保できるだけの値上げが出来るわけではありません。有機JASを取得することでのメリットは果たして何だろう、とあらためて思います。

有機JASを取得してから、これまでと違ってきたことが幾つかあります。それは、有機栽培の講習会やシンポジウムなどの案内が増えたこと。え?こんなにあちこちで開かれていたの?という感じです。有機JASを取得していなければそのほとんどは知らなかったということで、驚きました。行政も、いろいろやっていたのですね。有機JASを取得する前までは知り得ませんでした。

また、自分たちは有機栽培をしていても、有機JASを取得していなければ取引出来ない業者さんが結構いるんだということも感じます。これは有機JAS法の一つの成果でもあるのだろうと思います。半面、有機JASにはかなりの費用もかかります。実質的な持ち出しがいろいろ発生するので、取得前と同じ単価での販売は難しく、どうしても値上げが必要となってしまいます。今回の我が家の場合、実費だけでも研修費、研修に必要な宿泊費、交通費、申請料、現地確認の実費とその手数料など、約20万円は掛かっています。 それと、日々の記録や書類作成の手間、シールの作成や管理、機械洗浄の徹底など、やはり有機JAS取得前に比べると仕事量が膨大に増えました。今年度は転換期間中有機という表示で、これまた1年だけの表示。

それでも、今年の春の種まきの作物からは転換期間中の文字も消え、ようやく有機JASとして販売が出来ます。私たちにとって有機JASがどれほどのメリットがあるのかまだよくわかりません。タイミングが悪いことに、我が家の有機JAS取得と運送業者さんの運賃の大幅値上げとが重なってしまいました。お取引先様には大変心苦しいのですが、以前と変わらずに取引してださる業者様、お客様は本当にありがたく、心から感謝しています。
ありがとうございます!

(2019年3月27日)







PROFILE
宮原 光恵(みやはら・みつえ)
昭和37年生まれ。
北海道川上郡標茶町出身。
学生時代写真部に所属。
写真スタジオのアシスタントを経てフリーランスに。
日本人女性唯一の大型野生動物の写真家としてアラスカの自然と野生動物をライフワークに取材を続けていた際、現在の夫と出会い、結婚。
冬季のアラスカネイティブ社会で生活した経験を持つ。
狩猟採集の生活をベースに自然と共に暮らす生き方の実践のため現在の朱鞠内に1997年新規就農。
現在耕作面積約60ha、そのうち約4.3haでEMを使った有機栽培を実施。数十種類の野菜の栽培を行っている。
Mt.ピッシリ森の国 https://www.pissiri.com/
Facebook:https://www.facebook.com/Mt.pissirimorinokuni
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