私が勤めているパン工房では「パンに自家製野菜を使用したい!」と毎年、野菜づくりに取り組んでおり、2020年には約20坪のビニールハウスと150坪の土地でトマト、ナス、ピーマン、ニンニク、ジャガイモ、カボチャ、バジル、大葉、枝豆などを栽培しました。 今回は、この年に初めて取り組んだ、トマト栽培での光合成細菌の"活躍"についてご報告します。
初めて知った光合成細菌
それは2019年8月のことでした。 江別市で行われたEMボカシネット一泊研修会に参加した際、ホテルで同室の北海道EM普及協会の理事長と(有)システムバイオの社長とで光合成細菌談議になったのです。そのとき、社長から「光合成細菌は腐敗をエサにする」と聞いてびっくり。 さらに、理事長からも「太古の地球でメタンガスや硫化水素をエサにしてきた環境浄化の微生物」などと説明され、光合成細菌の話を詳しく伺うにつれて、私が20年来、EMの常識としてきた乳酸菌中心の概念が壊れたのと同時に、今までわからなかったEMの謎がストーンと腑に落ちた瞬間でした。 「光合成細菌は増殖スピードが極めて遅いので、菌数を増やすと効果が出る!」 「光合成細菌のエサは太陽光とタンパク質?」 「限界突破現象はなぜ起こる?」 「光合成細菌と乳酸菌や酵母との共生関係(チャンポン)こそ比嘉先生の大発明!」 などなど、これまで漠然と理解したつもりでいたのですが、「何も知らなかったなー!」と、かえって清々しい気持ちにもなりました。
光合成細菌の培養にチャレンジ
2019年9月、「よし、光合成細菌を培養してみよう!」と決心。普及協会の理事長からEM・3(光合成細菌)、システムバイオさんからエサであるソリュブルを購入し、太陽光が一番よく当たる外の物置の上に置き、赤くならないかと毎日何回も、穴が開くほど見つめていました。 しかし、1ヵ月経っても2ヵ月経っても赤くならず、このときは失敗してしまったのです。原因が知りたくて、理事長に尋ねたら「秋の低温では活性が落ちる」とのこと。 なるほど、太陽光やエサだけでなく温度も必要だったのだ、と改めて初歩的なことに気がつきました。 そして翌春、2020年3月に再びチャレンジ。 今回は絶対に成功させようと、お二人に何度も電話し、更にはEMボカシネットワークの方にも教えていただき、様々な環境温度、培養濃度なども検証した結果、ついに「赤くなったー!」 前回の失敗から半年以上かかったこともあり、この時は感動しました。
17連作のトマト栽培
2020年は、大玉トマト(ハウス桃太郎)50本と、ミニトマト(アイコ)10本をビニールハウスに植えました。 定植は例年より少し遅れた5月24日。 この日からほぼ毎日、300〜500倍希釈のEM・3を動力噴霧器で葉面散布しました。 ハウスでのトマト栽培は、連作17年目。 毎年EM活性液やEMボカシの生ごみ堆肥を施肥し、当然、化学肥料や農薬類は一切不使用。 もちろん、実りの良い年もありましたが、肥料過多で実の下段が飛ぶ年もあれば、早い時期から葉に斑点が出てしまう年、尻腐れが出た年、葉の色が悪い年、苗により相当結実にバラツキがある年、などなど決していつも順調ではありませんでした。 しかし、木成り完熟トマトの美味しさには毎年感動して、満足していました。
光合成細菌の"多果性"に驚き
EMは奥が深い!
こうして「奇跡!」などと驚いていてたら、EMの諸先輩方からすると"何をいまさら"と言われるでしょう。確かに、今もう一度読み直している本が、比嘉先生の著書「微生物の農業利用と環境保全」(1991年3月30日初版 農山漁村文化協会)です。比嘉先生が30年前に、「光合成細菌は発酵分解時に発生するガス等の汚染要因をも有効なエネルギーに変換する能力を持ち、光合成細菌を中核とした発酵合成型といわれる発酵と合成の強化された土壌こそ理想的」と、力説されていたことを、30年後の今、改めて"驚いて"います。 「実は光合成細菌がEMの大黒柱、そして、それを支える乳酸菌や酵母との共生関係がEMの入り口なんだ」と2020年の今になって初めて思いました。 EMって奥が深いですね! <『EMほっかいどう』 2020年11月97号より>
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