EM柴田農園の50から畑人 | 柴田和明・知子

Part.2 第13回 那須高原農場スノ・ハウス訪問記そのⅡ
技あり!レタスの通年栽培

前回から、EM栽培とJAS認証を得ている理想的な農家さんとして「那須高原農場スノ・ハウス」(以下、スノ・ハウス)さんを紹介しています。引き続き今回はその栽培技術についてお伝えします。

真冬の那須高原農場スノ・ハウス 
2024年1月1日~12日までの平均気温 最低-3.4℃、最高9.33℃ ●積雪5㎝
(参考:2023年の平均気温 / 4月~10月 最低14.14℃、最高26.24℃ / 11月~3月 最低-3.5℃、最高14.82℃)

春夏秋冬、確実に芽出しをする

「三つ子の魂百まで・・・」という言葉があるけれど、農業では「苗半作」といって健全な苗を育てれば、もう半分は成功したようなもの、と言われるぐらい育苗(いくびょう)は重要です。さらにスノ・ハウスでは年間を通して出荷するので、春夏秋冬切れ目なく種まきをします。野菜の栽培は何はともあれ種まきをして「芽」を出さなければ始まりませんからね。

 家庭菜園を始めて、種をまいたけれど芽が出てこないと悩んでいる方も多いのでは?
発芽の条件には「水」「空気(酸素)」「温度(20度~30度)」の3つの要素が必要です。水をかければ発芽するわけではありません。また発芽のために酸素も使うので、通気性の良い土と適度な水分量をキープしないと窒息してしまいます。ちなみに、種の保存は発芽の3つの条件をシャットアウトすることです。私の場合は冷蔵庫で保存しているものが多くあります。
注)種は5℃以下、30℃以上で休眠する可能性があります。農家さんには必ず苗を育てるためのハウス(育苗ハウス)があるので、真冬でもハウスの中で暖房機や電熱線などを使い温度管理をします。

外は寒くても育苗ハウスの中はいつも適温を保っています。
ずらりと並んでいる育苗トレーの下には電熱線が入っていて、発芽および育苗を均一にするためにヒーターは均等になる様に配線しています。温度を一定にコントロールするためのサーモスタットも使っています。レタスの場合、キープする温度は20℃です。

 

難しいレタスの発芽条件

レタスの発芽温度は20度前後と比較的低温です。
設備を整えれば温度を上げることはできますが、真夏に温度を下げるのはとても大変です。スノ・ハウスでも夏の発芽には苦労しているようですが、木陰や風通しなどを考え、工夫しながら育苗しています。

 多くの種は光の影響は受けないのですが、キク科のレタスは光で発芽が促進されるのも特徴です。表面に種まきをしたあと、指先で土をポンポンと微妙な感覚で押さえるのが良いそうです。
注)スノ・ハウスでは、種は必ず消毒、農薬処理なしを使い、発芽率が悪くならないように工夫しています。

下の育苗トレーを見てください。レタスの発芽状況です。このように同時に発芽させ、均一に生育させることが後々の作業効率に大きく影響していきます。

写真は128穴の育苗トレー、他にも品種によっては72穴トレーなども使います。 育苗培土も有機JASに適合しているピートモス・バーライト・赤玉細粒などをブレンドしてつくります。潅水はEM活性液の希釈液をまんべんなく使用します

芽が出たら大きな鉢に移植(植えかえ)

レタスだけでも数種類の品種を育てていると言うことです。
発芽後、双葉が出てある程度大きくなったら育苗トレーから育苗ポットに移植します。
育苗ポットは主に9㎝で、再生土、堆肥、赤玉細粒などを用いています。本葉が4~5枚出てきたら、ほ場に定植します。

種まきから定植までを省力化!

通常は育苗トレーに種まきをしてから9㎝ポットに移植した後に、ある程度大きくなったらポットから苗をはずして、ほ場に定植するのが一般的ですよね。
今回は特別にスノ・ハウスで行っている簡略化した方法を紹介していただきました。

初公開です!育苗ポットの底をよ∼く見てください。

普通は真ん中に一つ穴があるだけですが、スノ・ハウスでは独自に手作業で四隅に穴を開けたオリジナルポットを使います。
育苗ポットは6㎝サイズを使い、種代節約のために1粒ずつまきます。発芽率および収穫率90%以上を目標にしています。

発想の転換!ポットを苗ごとそのまま定植します。5つの穴から根が張るので生育には影響はなく、ポットがバリアーになって虫の被害からも守ることができるようです。これぞ最大の省力化!

収穫が終わってしばらくすると、このような状態になります。根や土だけでなく、育苗ポットも再利用します。

苗を育てる前に土を育てる!

育苗で使った土は再利用します。ここでも時間をかけ発酵、熟成させるためにスノ・ハウスでは堆肥をつくる専用のハウスがあります。
EMボカシなどの肥料成分を加えたり、苦土石灰などを入れてPh調整をしたり、オリジナル育苗培土をつくります。長年の経験から作物によってブレンドを変えるようです。ベテランの日比野さんでも、有機の土は全く同じものはつくれないとおっしゃっていました。「育土」という言い方もありますが、土づくりはこうすれば良いという単純なものではないということです。
那須高原農場スノ・ハウスではEMの培養装置「百倍利器」を年間休まず稼働してフルに活用しています。EMは土壌改良資材として育苗培土づくりはもちろんですが、堆肥づくり、ほ場の土づくりや水やりにも欠かせません。

種まき用、ポット用、ほ場用の土づくりは用途に応じてEM堆肥をブレンドしています

家庭菜園をしている方には手軽に使える有機JAS適合の育苗培土(種まき用EM有機培土ポット用EM有機培土)がお勧めです。

次回は、ほ場に定植したレタスやその他の野菜の生育を紹介します。


◆ 那須高原農場スノ・ハウスについて
http://suno-house.com
<お野菜の注文やお問い合わせ>
E-mail:sunohouse.tateno@gmail.com




【柴田さんへの質問はこちらから】<Web Ecopure お問い合わせフォームへ>

【柴田さんのお話を直接聞いてみたい方はこちら↓↓↓】

<すべてのイベント情報はこちらから | イベント一覧>https://www.ecopure.info/event/

 



<PROFILE>

柴田和明(しばたかずあき) 会社退職後、約2年間栃木県農業大学校で農業を学び、その後トマト農家で1年間研修を受け就農。 柴田知子(しばたともこ) 会社退職後、東京農業大学(世田谷区)オープンキャンパスのカレッジ講座で野菜や果樹の育て方、スローフード、発酵などの講座を受講。EM柴田農園では、種まきから仮植、種取りなどの細やかな作業を担当。