連載

Part.2 第4回 ご飯を一工夫しよう<具体的食改善その③>

タネの力 ― ご飯の話をする前に種(タネ)について

光と水と温度を感知して長い眠りから覚め、生き抜くために周りの環境を察知し、水分状態に応じて葉と根の割合を調節、光の強さに応じて葉のつき方を変える・・。命のカプセルであるタネに込められた能力はすごいんです。
すべての命は大人になり、子どもを作ります。例えばニンジンは長い冬を耐えて育ち、春に花を咲かせ、タネを付けます。タネが実る頃、根はスカスカです。それは、ニンジンが今日まで蓄積した生きる力のすべてをタネに託すからです。
タネは生きる力そのもの。だから、私たちの主食はご飯なんです。肉、卵、牛乳より何より、私たち日本人が昔から食べ続け、命をつないできた最も大切な生き物です。

タネに次のいのちを託して茎も葉も枯れ果てたニンジンさん
タネに次のいのちを託して茎も葉も枯れ果てたニンジンさん

日本の食を守る健康ご飯生活

もしかして、ご飯とパンは主成分が炭水化物だから同じだと思っていませんか?
米は真夏の強い光を集めて出来ていますが、小麦が浴びるのは寒い時期の弱い光です。そのパワーの差がおかずの違いに表れるのかも知れません。ご飯のおかずはあっさりしたもので済みますが、パンだと肉や脂もののおかずでないと体がもちません。またパンよりご飯の方が、体温を上げてくれます。
では、欧米人はどうしてパン食が主体なのか?人類の発祥の地であるアフリカから米の出来ない寒い場所に移り住んだ欧米人は、数千年の歳月をかけて体内の酵素が変わったり、腸が短くなったりして、洋食でも健康に生きられるような体に変化していったのです。人の体って、すごいですね。
世界的な食糧高騰が現実味を帯びる中で、日本の農家は米を作りたくても作れない。そのため、いざと言うときに水を漏らさずに貯めることが出来る田んぼは年々減ってきています。日本の数年先の食糧を守るのは、私たちの今日の健康ご飯生活にかかっていると言えます。パン屋さんも出来れば、国産小麦や米粉を使ったパンを広げて欲しいですね。

米の料理のしかた

では、その生きる能力に満ちた米粒をどういただくか?
多くの人が米粒の一番外側のヌカの部分をはがした白米(銀シャリ)を食べていると思います。米へんに白で「粕」、健康の康と書いて「糠」と呼ぶように、ビタミンやミネラル、ファイトケミカルの95%以上はこのヌカの部分にあります。だから、千円で買った米も白米にするとエネルギー源にはなりますが、体を健康に保つための大切な栄養分は50円分しか食べていないことになります。これは実にモッタイナイ。
米は「洗う」ではなく、「研ぐ」と言いますね。それは、白米の場合、ヌカをはがしてから時間が経つと表面が酸化するからで、酸化部分は体に非常に悪く、味もまずいので、炊飯前に必ず米粒同士をこすり合わせるわけです。
その点、玄米は硬い表皮に覆われているので酸化しません。炊き方を工夫したり、1~2日間水につけたりなどして美味しく玄米ご飯を食べる方法がありますが、家族が嫌がることも多いようです。そんな時は、分づき米に。例えば、ヌカの6割をはがした6分づきにすると白米と同じように炊けて、食感もほとんど変わらないのに、4割の大切な栄養成分をいただけるのです。
ただ、分づき米をまとめて買うと表面に付着しているヌカが次第に酸化していきます。そこでお勧めなのが、家庭用精米器。食べる直前に玄米を精米すれば、米の表面は酸化していないので、研ぐ手間まで不要になるのです。精米器は家電店で2万円程度。一見、高いようですが、これで家族の健康が守られると思えば安いものです。
それでももし、「真っ白いご飯が食べたい」と家族に反対されたときは、麦、ヒエ、キビ、アワなどの雑穀を少量加えてはいかがでしょうか。生きるための大切な微量成分が、葉や根からあの小さな粒の中に濃縮されて渡されていますから、少し加えただけでも随分違うはずです。
私がこのようなアドバイスをしたら、同居している祖父母から、「この年になって、鳥のえさは食わんでよか(食べなくても良い)」と言われたという人がいました。そんな時は最後の手段。白米を炊飯器に仕込み、その上から雑穀や分づき米を入れて炊飯してください。ご飯をつぐ時に取り分けるのです。これなら、家庭内での無用な摩擦もなく、仲良く食事を楽しめます。

プラス豆パワーで脳機能アップ

豆入りご飯は特にお勧めです。豆と米で必須アミノ酸バランスが最適になるわけですが、煮豆を買ってきても、実は加工場で調理する段階で多くは煮汁に逃げてしまっていたのです。
また、大豆に含まれるレシチンは私たちの細胞膜に使われて、細胞の内外の物質のやり取りをしたり、また神経伝達物質に使われて、記憶力や様々な脳機能を向上させます。そんな生命の基礎物質が調理済み食品では煮汁として捨てられていたのです。だから、レシチンを逃がさない料理にすることで、うつ病や発達障害が改善する例もあるのです。
では、豆を煮汁ごと全部いただくにはどうすればいいか?そうです。豆入りご飯です。たとえ豆が嫌いで残したとしても、豆の煮汁はご飯の中に入ってきています。
ところで、病気をしたときは、当然分づき米より玄米ですよ。「えっ、消化に悪いものを病人に食べさせていいの?」。大丈夫です。消化吸収しやすいように玄米にひと工夫加えればいいのです。
厚手のフライパンで玄米をそのままゆっくり炒ります。きつね色になったら、水と自然海塩を加えて弱火でコトコト炊きます。こうするとふわっとした感じの消化吸収の良い玄米がゆの出来上がりです。お好みで豆や野菜などの具を少量入れます。
もっとも、走りながらおにぎりを食べるマラソン選手がいないように、熱が出ている最中に食べて消化することに血液を使うのは不自然です。だから、玄米がゆをたべるのは、熱がやや下がって、おなかが空いたときにして下さいね。

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