生ごみで元気野菜づくり!を提案に
生ごみ減量方策を求めて、昨年10月に、マレーシアの北クチン市の関係者数名が、財団法人地球環境戦略研究機関(IGES)の紹介で“NPO法人大地といのちの会”事務局を訪れて研修を受けました。そこで当会の技術や普及方法を知って、この方法なら自分たちの国でも普及できるかもしれないと感じたようです。今回現地に直接来て欲しいとの要請を受け、1月29日より、北クチン市※へ、生ごみ減量の助言に行ってきました。
到着した第一印象は、私が想像していた以上の都会でした。産出する石油で潤っているようです。小高い丘の頂上に、街を見わたすように円柱形の市庁舎がそびえ立ち、各階の廊下も円形なんです。議会の建物にいたっては、おとぎの国のお城のようでした。一般市民の生活に比べてちょっと豪華すぎるように感じましたが・・。
ただ、もう一つすぐに気が付いたのは、町中にごみが散らかっていることです。大量ではないのですが、町中のどこも、道脇という道脇はすべて、一片の包装袋、1個のペットボトルが1~数メートル間隔に置いてあるといった感じなんです。市民みんなで拾ったら数時間で町中がきれいになってしまうくらいの量ですが、とても目立つのです。どうして拾わないのですか?と聞いてみましたが、ごみ拾いは下賤なものがすることといった感覚もあるらしく、またみんなが捨てるので拾っても同じことと思っているようでした。同行したIGESの方に聞くと、小さい時からこの町で育ち、このごみがあることに違和感を持たなくなっているからだろうとのことでした。だからこちらの人が日本に来ると、まず町全体にごみがないのにびっくりするそうです。昔の日本人が築き上げてきた日本の環境と日本人の感覚をあらためてありがたく感じました。
※北クチン市
ボルネオ島の北西部に位置するサラワク州の州都、クチン。街の中央に蛇行するサラワク川が流れ、この川を軸に街が形成されている。川を境に北がマレー系の北クチン首都特別市、南側が商業地区で中国系の人々が暮らす南市で、人口はあわせて47万人。面積約431平方キロメートル。気候は、年間を通じて気温は23℃~32℃の常夏である。11~2月は熱帯モンスーンの影響を受け、雨が多い。日本との時差は-1時間
悩みは同じ、ごみの減量化
まずは市庁舎で、環境部の主要メンバーの方々と、お互いにプレゼンテーションを行い相互理解を図りました。北クチン市ではこれまで多くのごみは埋め立てられて異臭を放っていたそうですが、最近は焼却施設の建設、運営をドイツの企業に委託して、ほとんどが焼却されているようでした。家庭から出る生ごみや、草や落ち葉等がごみ全体の約半分を占めていて、日本とほとんど変わりません。これを外国企業に委託して焼却しているのですから、生ごみを減らしたい動機としては日本以上かもしれません。
そこで、市の生ごみ減量対策としては、一つは家庭の生ごみは家庭で処理する方法の普及、もう一つは、生ごみや自然の有機物を使って有用堆肥を作るコンポストセンターの拡大の2つの方策で生ごみ減量を推進しようとしているが、家庭での生ごみ減量がなかなか普及しないとのことでした。
私からの提案は、まず家庭の生ごみを各家庭内で有効活用することの重要性。そのためには、市民にごみ減量を呼び掛けても、減量というだけではイメージ的に楽しくないこと。生ごみを使うと今まで以上に美味しくて栄養たっぷりの野菜ができるということを前面に出して元気野菜づくりを普及すると、結果的にごみ減量が一番達成できるのではないかと説明しました。
その中で、「害虫は、おいしい野菜が好きと思いますか?おいしくない野菜が好きと思いますが?」と尋ねたところ、全員が「おいしい野菜だろう」と答えたのには正直びっくりしました。“日本と同じじゃないですか!”――自然の暮らしから離れたいわゆる先進国の人は、そんな大間違いをしていることが多いのです。「昔ながらの農業をしていたら、不健康な野菜、老化した美味しくない部位に虫が集まることは常識なのですが・・」と言ったら驚いていました。
そこで、虫が同じ野菜でもえり好みしていることがわかる写真を見せ、農薬不要のおいしい野菜が育つかどうかは土で決まり、いい土かどうかはそこに育つ雑草を見たらほぼ想像がつくこと。そして、生ごみや雑草堆肥を使うと、そんな最高の土が素人に簡単にできること。日本でも、そんな美味しい野菜づくりを農家ではなく一般市民が生ごみを使って育て始めていることを説明しました。農業関係者がいなかったことが残念ですが、みなさん半信半疑というか、7割が信じて3割が疑っているようでした。(続く)