おしえて!いまむらさん 読んで納得、EMのおはなし | 今村公三郎

<特別編>おしえて!しんたにさん 『テラ・プレタや発酵合成型土壌をつくるのに役立つEM整流炭のお話し』

こんにちは、EM研究所の今村です。
今回は<特別編>『おしえて!しんたにさん』として、私が所属していた琉球大学農学部比嘉照夫教授の研究室の先輩である新谷さんのテラ・プレタに関する記事をご紹介します。
光合成細菌と炭の関係性について、大変興味深い内容です。

奇跡の土壌「テラ・プレタ」 ― 発酵型土壌との類似点

炭は、昔から日本の農業の現場で土壌改良や育苗に活用されています。一方、海外では、2000年代から生物資源由来の炭がバイオ炭(biochar)として注目されるようになりました。そのきっかけは、ブラジルのアマゾンで農作物が何十年も無肥料で良く育ち、連作障害も起きないという土壌「テラ・プレタ(黒い土)」の存在が報告され、調査の結果、テラ・プレタには大量のバイオ炭が含まれていることがわかったからです。
現在、テラ・プレタはアマゾンの古代先住民族が何百年にわたり、炭や生ゴミ、陶器の破片、骨を1箇所に捨てたことにより形成された人工土壌と考えられています。このテラ・プレタの特長を考えると、比嘉教授が定義された発酵合成型土壌に最も近い土壌のひとつと言えます。
農地に炭を施用すると、土壌の透水性、保水性、通気性、保肥力が改善して、農作物の生育が向上し、収量も上がるということが報告されています。だからと言って、大量の炭と有機物を土壌に投入したら、本物のテラ・プレタと同じ機能を持つ土壌をつくれるかというと、そう簡単な話ではないようです。
世界の論文情報等を検索してもテラ・プレタの再現に成功したという報告はまだ見たことがありません。つまり、テラ・プレタをつくるには炭と有機物の他に必要不可欠となる何かがあるということです。

発酵型土壌に必要不可欠な”菌”の存在

比嘉教授は著書「微生物の農業利用と環境保全」(農文協)の中で、「発酵合成型土壌をつくるには、発酵微生物のほかに光合成微生物や窒素固定微生物などのような、外部のエネルギーを積極的に取り込む能力のある微生物は必要不可欠な存在である。」と述べられています。

テラ・プレタが発酵合成型土壌のひとつであるとすると、炭や有機物以外にEMのような発酵微生物と合成微生物が必要不可欠であると言えます。

さらに、比嘉教授はEMの効果を安定させるための要点として「微生物の分裂のスピードを考えると、施用量よりも施用された後の増える条件の方がより重要である。」と述べられています。すなわち、畑にEMを大量に散布したのに、期待する効果が得られていないと言う場合は、発酵微生物と合成微生物が土壌中に定着せず、増殖していないことが原因だと考えられます。

つまり、テラ・プレタや発酵合成型土壌をつくるには、EMを構成する乳酸菌や酵母のような発酵微生物と、光合成細菌のような合成微生物が定着して、増殖できる土壌環境にすることが重要となります。

比嘉教授が開発されたEM整流炭(特にEMグラビトロン炭)は整流力が強化されたものですが、EM、特に光合成細菌を土壌中に定着させるためにも役立ちます。
EMグラビトロン炭とは岩手コンポスト(株)の敷地に設置されたEMグラビトロン炭化システムで製造されている有機JAS適合のEM整流炭のこと<図1>。

<図1>有機JAS適合のEM整流炭、EMグラビトロン炭

EMグラビトロン炭についての2つの実験

EMグラビトロン炭を適切な培養条件下に置いておくと光合成細菌のコロニーが出現します<図2>。

そこで、我々はEMグラビトロン炭について2つの実験をしました。
一つは、キュウリを用いた根の生長比較実験です。
EMグラビトロン炭(EMGC)を混ぜた育苗土でキュウリを育てたところ、炭が入っていない育苗土で育てた苗の根に比べて、明らかに根の生長が優れていました<図3>。炭の添加が植物の根の生長を促進することは知られていますが、我々が行ったキュウリを用いた実験では、通常の炭と比べてもEMグラビトロン炭の方が根の生長を促進しました。さらに、実験終了時の育苗土を分析すると、EMグラビトロン炭を混ぜた育苗土からのみ光合成細菌が検出されました<図4>。

次に、炭と光合成細菌の植物の生長への効果と、光合成細菌の土壌中の定着率を調べました。
A)土のみ-対照区、B)通常の炭-混合率30%、C)光合成細菌液-ポット当り3mlを1回施用、D)EMグラビトロン炭-混合率30%の4つを試験区として設定し、スィートコーンで育苗、栽培試験を行いました。

<図5>は、各処理区におけるスィートコーン苗の地上部と根の様子を写した写真です。

地上部の生長には大きな差は見られませんでしたが、根の発達についてはA)土のみと比べて、C)光合成細菌液の方が若干良く、B)通常の炭とD)EMグラビトロン炭で根の発達が進んでいました。
さらに、これらのスィートコーン苗をハウス内の一画に定植し、さらに27日間栽培した後、根の乾燥重を測定しました。根の生長はA)土のみと比べて、B)通常の炭、C)光合成細菌液、D)EMグラビトロン炭の方が明らかに発達していました<図6>。

地下部(根)と地上部との結果を合わせて見ると、A)土のみでは根の生長より地上部の生育が早く、B)通常の炭、C)光合成細菌液、D)EMグラビトロン炭では地上部の生育より地下部(根)の生育が早いという傾向が認められました。
<図7>は土壌中の光合成細菌数の推移を示したグラフです。

A)土のみ、B)通常の炭では、栽培期間中一度も土壌から光合成細菌が検出されませんでした。C)光合成細菌液では、定植時に土壌1g当り約100万の光合成細菌が検出されましたが、定植後、時間の経過と共に減少し、27日目には土壌から検出されなくなりました。一方、D)EMグラビトロン炭では土壌1g当り約10万の光合成細菌が検出され、定植後は時間の経過と共に少しずつ減少したものの、27日目でも土壌に1g当り1000以上の光合成細菌が検出されました。

これらの結果から、炭、EMグラビトロン炭、光合成細菌液で野菜の根の生長が促進された理由は、炭は主に土壌の通気性や透水性等の物理性を改善したことにより、光合成細菌液はアミノ酸や生理活性物質を根に供給したことにより根の生長が促進されたと考えられます。

土壌中の光合成細菌数は、C)光合成細菌液の結果によると、時間の経過と共に減少し、27日目には検出されなくなりました。これは土壌中で光合成細菌が放線菌などの他の微生物に食べられてしまったか、住処として定着できる場所がなかったために減少したことが原因と考えられます。

一方、D)EMグラビトロン炭では、炭の多孔質構造が光合成細菌の住処となるだけでなく、炭が持つ土壌中の電子を保持したり放出したりする機能により、光合成細菌が炭を通して電子を得て、太陽光が届かない土の中でも光合成を行うことにより生命を維持していたことから、定植後27日経過しても光合成細菌が検出されたと考えられます。

今回の実験は27日(播種から55日)で終了しましたが、栽培をさらに継続していた場合、A)土のみ、B)通常の炭、C)光合成細菌液では、スィートコーンが吸収できる土壌中の肥料成分がなくなった時点で、生長が止まることが予測されます。しかし、D)EMグラビトロン炭では、光合成細菌のエネルギー合成力が維持されている限り、スィートコーンの生長も続くと予測されます。

実際の栽培では、EMグラビトロン炭とEMボカシを施用後、EM活性液を定期的に散布すれば、追肥をしなくても、土壌中に常時、発酵微生物と光合成細菌を維持できるようになるので地力が落ちることなく、野菜が健全に育つと考えています。

現在、露地の畑で従来のEM技術に加えて、EM整流炭やEMグラビトロン炭の利用を含む最新EM技術を使うことにより、短期間でテラ・プレタ、発酵合成型土壌をつくる実証試験に取り組んでいます。結果がまとまりましたら、また、ご報告したいと思います。

EM整流炭やEMグラビトロン炭をまだ使ったことがない方やご興味がある方は、育苗に使うなら少しの量で試せるので、ぜひ使用してその効果を実感してみてください。

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<PROFILE>
新谷正樹(しんたに まさき)
医学博士。兵庫県出身 1965年生まれ 筑波大学卒業後、青年海外協力隊に参加。帰国後に琉球大学大学院で比嘉照夫教授の下で学ぶ(農学修士)。タイのAPNANやコスタリカのアース大学等で12年間EM技術を活用した農業及び環境保全の技術指導を行う。帰国後、東京女子医科大学大学院先端生命医学科で医学博士を取得。現在、EM研究機構執行取締役。