レポート(トピックス)

喜びを創りだすガーデン ~「EMガーデン 花*花」遠藤かつゑさん

大地にふりそそぐ太陽の光が、日一日まぶしく輝く初夏。花も鳥も虫も、地球上のあらゆる生命が一斉に動き出します。ガーデナーにとっては、日ごろの手入れの結果が現れる最高の季節ではないでしょうか?

250坪に600種の草花が共生するガーデン

山形県長井市で「EMガーデン花・花」を主宰する遠藤かつゑさんも、そのひとり。「この季節が大好き。ことにイメージ通りに花が咲いてくれると心から感動する」と庭を耕し、種を蒔いた人だけが語れる言葉で胸踊るこの季節を語っています。

その遠藤さんの楽園を5月の末、全国各地で取り組まれている花や緑による優秀な活動を顕彰し、広く紹介する「全国花のまちづくりコンクール」審査委員長でもある比嘉照夫教授と「ガーデン」にあこがれるEMボランティアの女性たちが訪問しました。250坪に600種の草花が共生するガーデンの芳醇な香りと鮮やかな色に参加者たちは、「あらかたの人生の問題も解決できそうね」と心の庭もオープンになったようです。

自然からのごほうびのようなガーデン

子ども時代から、花づくりをしている比嘉教授は、「植物はそれぞれ自分の居場所を決めて、一生を終える。宿根草や一年草であっても、一度決めてしまえば自らの力で花を咲かせる。この庭では、それぞれの花が生きる場所を決めて、しかも見事に調和している。自然生態系が整っている証で、もはや、名人の域」と遠藤さんの花への愛情と技術を高く評価し、「次の課題は芸術性を高め、いかに人を楽しませるかだ」と話しました。

次のステップを目指して、と遠藤さんを励ます比嘉教授

夢のガーデンづくりの始まり

さて、遠藤さんが長年の夢であったガーデンづくりを始めたのは、今から18年前の1998年のこと。朝日連峰に囲まれ自然豊かな農村地帯である長井市で築59年の廃屋に近い家を買い求め、家を修理し、荒れた土地の木を切り、理想の家と庭に変えていきます。
近隣の住人は、「あんな場所でいったいどうするのだろう」と遠くから見ていたといいます。当時、遠藤さんは50歳にもならぬ若さでしたが、ふたりの孫と6匹の猫や犬のために農薬と化学肥料は使わないと決め、はじめは炭のくずなどを活用していました。庭に日が射すようになるとこの地に自生する草花を中心に宿根草や多年草、ハーブなどが育ち、少しずつ庭の形が整っていきました。4年後には、長井市の花いっぱいコンクール個人部門の最優秀賞を受賞。さらに2004年には、日本園芸協会主催の全国ガーデニングコンテストに入選し、ガーデナーとして腕を磨いていきます。このころには、花友だちも増えて、地域でも美しい庭のおうちとして一目置かれる存在になっていきます。

株分けした宿根草、下草もいきいき

EMが庭にドラマチックな変化をもたらす

さらに2年後、遠藤さんの庭がドラマチックに変わる事件がおきます。花仲間のひとりから、「植物にも環境にもよいEMを使ってみて」と薦められ、EMの増やし方などを納得がいくまで勉強していきます。
その後、地域のEM豚ぷんやEM活性液などを使ってみると花壇の様子が、がらりと変わりました。「花の大きさや色の鮮やかさが違う。花のもつ特性をせいいっぱい発揮している。これが微生物の力なのかな」と驚いたといいます。2009年には、第18回全国花のまちづくりコンクール個人部門国土交通大臣賞を受賞するという栄冠にも輝きました。

しかし、遠藤さんは庭で季節の花々を育てるライフ・スタイルで終わらず、「花と緑・環境の会」を設立。7年間でEMインストラクター(地球環境共生ネットワークが開催したEMの基礎から使い方の学習会の受講者)400名以上育てる地域貢献の一翼を担いました。そして、その仲間たちと花を通して地域循環型社会づくりに乗り出すことになるのです。

土づくりから開始した駅の花壇

今では、長井市内の空き地や、フラワー長井線の長井駅や羽前成田駅の空き地を生態系豊かなナチュラルガーデンに変え、町の人や観光客の目を楽しませています。遊歩道のある80坪の花壇は、町の中にすんなりと溶け込んでいます。また、駅は鉄道がある限り、存在する場所で、そこに咲いている花は、駅を利用する人たちの心に永遠に残る風景となります。アメリカの絵本画家で園芸家でもあるターシャ・テューダーは、「ガーデンは喜びを創りだすもの」と言っています。喜びを創りだし、喜びを分かち合う花づくり。遠藤さんを中心にした花ボランティアの活躍を若い人たちに伝えていきたいものです。

遠藤さんに聞く!
EMを活用して荒れ地を花いっぱいにする、 循環型の花壇づくりのコツ

  1. 日当たりをよくするため、大きな木は切る。
    切った木は、ベンチやアーチなどに活用する。
    2009年の花壇。木の切り株が見える
    2015年の花壇。木の飾り物が馴染んでいる
  2. 全面にEM鶏糞やEM豚糞などを入れる。
    なければ、畜糞を入れた上にEM発酵液を撒く。
    畜糞を使わない場合は、枯れ草などをEM堆肥にして前面に漉き込む。
  3. 生ごみ、花がらもEM堆肥にする。
    追肥のためのコンポストづくり。循環型の花壇には欠かせない大切な作業
    街の花壇。衝立の向こう側がコンポストづくりをする堆肥置き場
  4. レイアウトは自由だが、通路は必ずつくること。
    通路には木屑、籾殻を敷き、EM活性液をまく。
    歩くと土が固くなって雨水が溜まりやすくなる影響を防ぐ効果も。
  5. 自生している植物や、果樹、花木を生かす。
    水やりは自然にまかせるが、土が乾いている場合は、雨の降る前にEM活性液を撒く。
    歩くと土が固くなって雨水が溜まりやすくなる。その影響を防ぐ効果も

*比嘉先生からのアドバイス

ミネラルの補給とEMの活性化のためEM活性液に塩を入れる。植物を植える前に直接、塩(自然塩)を播いてからEM活性液を撒いても良い。

文責:小野田