南から北まで、お米の収穫が終わった。
農水省によれば、昨年度(2014年度産)の俵あたりのコメの生産費は15,416円で、コメを1俵売るごとにその差額分が赤字となっていく。今年の米値は安定したとはいえ、生産費を上回ることはない。これでは、米農家がスーパーで米を買った方がいいと思うに違いない。実際、米どころの地域の主婦の間でも、米の価格の安さは話題となり、家計が助かるというよりも、自分たちの住む地域が米でやっていけるかという不安の方が大きい。農家が米をつくる日が終わる。それがいよいよ現実味を帯びているのだ。
さらに追い討ちをかけるようにTPP(環太平洋連携協定)交渉が大筋合意され、輸入米5万8000トン新たに加わり、毎年およそ82万トンの無関税米が輸入されることになる。政府は、担い手を限定して農地を集約。経営規模を大きくすることで、外国との競争力をつける方針だが、大陸とは違い平地が少ない日本の地形では難しい。ちなみに日本の経営規模の競争力格差は、米国の100分の1、豪州の1500分の1。「同じ土俵で戦えというのは机上の空論だ」というのが現場の声だ。大型化すれば、必然的に農薬量は増え、自然の循環は壊されていく。
日本の中山間地の田畑が、国土の保全、自然の循環、景観の保全に重要な役割を果たしている。大規模化、飼料米(家畜のエサ用)への作付けとは別次元の抜本的な対策が必要なことは、お米を食べる側(=消費者)にわかる。そもそも、地球温暖化の影響で、一等米の比率や病害虫の増加が予想されている。むやみに田んぼを潰していっていいのだろうか。このままいって日本の農業は、大丈夫?
それでは、農家も消費者も納得できる農業とはどんなものなのか?EMの開発者である比嘉照夫教授は、「EM農法を広めていけば、低コストで高品質、しかも多収の持続可能な農業ができる」と発想の転換を促す。
今年の米の生産量は、747万トンで、生産数量を4万トン下回り、04年産から始まった米の生産調整の目標が達成した。畜産用の飼料米への切り替えが功を奏した形だが、畜産もTPPの影響で深刻な問題を抱える。飼料米に頼らず、ことに自給率4パーセントしかない大豆を栽培する田畑転換は、日本の農業を大きく変えるものだと期待されている。
米農家の平均年齢は70歳。このままいけば、日本人が新米を食べられるのは後何年になるかという話になる。外国の畑が黄金色に輝き、日本の田んぼに草が生える。田んぼという小さなダムが無くなり、都市が洪水で被害を受ける。
ご飯を食べて米農家を応援では間に合わない。広くは日本の国土、狭くは自分の生命の問題として農業をどう考えるか、「TPPで安い食べ物が輸入されて助かる」というマスコミの論調に惑わされないようにしたいものだ。
■ 福士式地下かんがい法について http://www.ecopure.info/special/yuuki/hukushi/hukushi.html
【 TPP(環太平洋連携協定)】 例外のない関税撤廃を原則とし、幅広い分野にわたって規制・制度の変更を求められる、極めて自由化度の高い包括的協定。日本の農林水産業では米や牛肉など輸入枠の新設や大幅な関税削減を受け入れた。参加国は、オーストラリア,ブルネイ・ダルサラーム,カナダ,チリ,日本,マレーシア,メキシコ,ニュージーランド,ペルー,シンガポール,米国,ベトナム。