2021年7月に起きた熱海土砂崩れ。熱海の街を一瞬で飲み込んだ土石流は素人の目からみても「地球温暖化」による「想定外の雨量」では説明できない重大な問題があるだろうことを実感させてくれた。全国各地で発生している自然災害と呼ばれる土砂崩れの原因として、無謀な森の伐採や安易な盛土などが問題視されている。そこで、地表の上の自然破壊に連動して土表の下、つまり土の中の環境がどうなっているかに注目したのが、著者・環境土木研究所の高田宏臣氏だ。
高田氏は長年被災地の周辺、山河に分け入り、環境上の視点から災害の根本的な原因を調査してきた。その結果、土の中の断層や水脈を無視した自然環境の変化が山、川、里、海のつながりを断つことになっていると確認。 もし健康な山や川であれば、土壌が豊かな雨を受け止めて動物や植物の生長を促しつつ、残りの雨が川となり、海に流れて海の生物を育てる、という循環が成立する。
しかし現代、自然に寄り添う土木の考え方はIT化も進んだことから重要視されなくなった。その結果、国土は荒れ果ててしまいつつある。本書では、ダムや太陽光発電、風力発電などの施設による土中の環境破壊を警告し、身近な土の環境を変える方法を提案している。
その材料は落ち葉、炭、くん炭、生ごみなどで、究極的には土壌微生物を豊かにすることにつながると解説。ことに落ち葉が土壌を豊かにするだけではなく、土の中の構造を変えていくということに驚きだ。