中国餃子事件で食の問題は頂点に達した感があったが、今度はこともあろうに日本人の食の原点である米の流通に重大な過失があることが表面化した。工業用の米を食用として転売していたことは、法的にも道義的にも許されることではない。食が経済効率の中に取り込まれ、「安さ」競争の果ての大きな犠牲が社会全体に及んでいることの証明でもある。
本書では、人々の生存を支える農村の荒廃と食品産業の過酷な労働の背後に「貧しさの連鎖」があると鋭く指摘している。食の危機を、経済の構造的な問題、ひいては労働者の問題としてとらえ、農民と都市労働者双方の生存権をかけた運動の必要性を説いている。著者の2人はともに1940年生まれ。戦後の農村の変貌を見続けてきたベテランジャーナリストだ。