レポート(トピックス)

第2回 正木一郎記念 ユニバーサルビレッジ・EM国際会議

27ヵ国200人が集結、未来を拓くEM国際会議

2024年11月30日から12月1日にかけ、沖縄県北中城村にある暮らしの発酵ライフスタイルリゾート(以下:EMホテル)で国内外27ヵ国から約200人が参加した「第2回 正木一郎記念 ユニバーサルビレッジ・EM国際会議」が開催されました。主催は創立30周年を迎えた株式会社EM研究機構(代表取締役社長 比嘉新・本社沖縄県北中城村)。

ユニバーサルビレッジ(以下:UV)とは、マサチューセッツ工科大学の正木一郎博士(2021年7月逝去)が提唱した「地球環境と生物多様性の保全、および人類の持続可能な発展を可能にする未来型社会」を実現すべくEM技術の開発者比嘉照夫琉球大学名誉教授とEM関連グループが全国各地にひな型をつくり、推進しています。正木博士は「人類の危機はEMで克服できる」と明言されていて、(株)EM研究機構ではUV構想を継承・発展させるEM国際会議を企画、2022年11月に第1回(オンライン開催)、今回第2回目の開催となりました。

85人の海外参加者と共有された現場の知恵

30日午前9時から開始した会議は海外からの参加者85人に同時通訳で対応され、国際会議の情報を共有しました。(株)EM研究機構の比嘉新代表取締役社長は「本日、共有された情報が現場で活用され、応用が進み、応用が進んだ事例が再びこのような会議で共有されることで情報のレベルと現場のレベルが合致し、EM技術の使命である誰もが安心して暮らせる幸福度の高い社会づくり国づくりの実現につながることを期待しています」と挨拶。この後、国内から4事例、海外から3事例の実践報告が行われました。

<左>開会のあいさつをする比嘉新(株)EM研究機構代表取締役社長、<右>総括講演する比嘉教授

比嘉教授は総括講演で、それぞれの事例報告を丁寧に講評し、活動者らを奨励しました。さらに、「正木教授は、地球上に起こっている様々な問題は微生物の活用で解決できる確固たる考えを持っており、EMの活用に期待され、ユニバーサルビレッジの創成を提案してくれました」「これまで私は、EMは万能であると主張し続けてきました。EMが量子力学的に多様な性質を持っているためです。地球を救う大変革を完全になしとげるためには、このEMの量子力学的な性質をすべての分野に応用し、地球をユニバーサルビレッジにすることです」と改めてユニバーサルビレッジ構想の意義を訴えました。

続いて行われた懇親会では国内外の参加者らが入り混じって記念写真を撮りあうなど、共通言語「EM」が会を盛り上げていました。

7事例の発表者と比嘉教授<上段左から>西渕泰さん、齋藤則高・麻恵ご夫妻、小泉さん、山路さん <下段>ヒマドリさん、ナゴさん、比嘉教授、モハンカさん、フイ・チン博士

7事例の主な発表内容は次の通り。

①   西渕泰(EM研究機構取締役)「北中城村 農を活かした健康・福祉の里づくりに向けた推進事業 EMユニバーサルビレッジプロジェクト」

(株)EM研究機構が「地域再生推進法人」を取得して官産協働で取り組んでいるユニバーサルビレッジ事業についての進捗状況を報告。(詳細は2日目の現場視察で紹介)

②   山路誠二(三重県・紀州EMひろば)「EM塩除草の目指す、新たな稲作」

塩を大量に入れた画期的な稲作に取り組んでいて、大量に塩を入れると雑草の種は死滅するが、降雨や田面の均平などが影響するので、さらなる検証が必要とした。肥料効果では、「塩を入れて活性液を投入し半年置いたところは稲の色が濃くなり、利用する方向性が見えてきた」と比嘉教授から課せられた「肥料の代替えとしての塩の利用について」の検証の経緯を報告。

③   小泉章(神奈川県・小泉農園)「畑をテラプレタ土壌にし、体もEM化させる小泉農園の試み」

12年間毎月第2土曜日に自宅農園で開催している「農業講座」は近隣都県からの参加者も多く、毎回20人~40人の塾生と共に畑のテラプレタ化に取り組んでいる。比嘉教授が推奨する果物の皮などでつくる”EMピューレ”で体のEM化を体現化。「EMピューレを食べて元気になると”比嘉セオリー”まで読み解けるようになり、何が大切かを感じるようになる」と訴えた。

④   齋藤則高・麻恵(北海道・アムリタファーム)「新規就農・開墾から、グランプリ獲得までの道―EMと共に歩んだ10年間」

2014年に北海道ニセコ町の原野を開墾して現在6haの敷地に6棟のハウスでアスパラ、トマト、カボチャなどを栽培。本格的なEM活用は2016年以降で、2022年にEM結界をハウス内に設置し、グラビトン農法でトマト栽培を試みたところ、糖度、抗酸化力、ビタミンCの機能性が向上。分析機関のメディカル青果物研究所の勧めでオーガニックエコフェスタ「身体に美味しい農産物コンテスト」に2023年、2024年と応募すると、トマト大玉部門で2年連続最優秀賞を受賞。「EMに出会え、自分の意識を育てることで大きな愛のエネルギーを使えるようになった」と喜びを話した。

⑤   マダン・モハン・モハンカ、Dr.ヒマドリ(インド)「環境保全に革命を起こすEM技術によるバイオレメディエーション」

2003年、シッキム州は世界で初めての有機農業州を宣言、396の村が「バイオビレッジ」として認定されている。2015年には完全有機農業州を実現、国際連合食糧農業機関から最優秀政策賞を授与された。モハンカさんのメイプル社は完全有機農法化の実現を支えた。2022年下水処理施設にEM技術を利用したバイオメディエーション処理法がスタート。農村部の池の浄化が環境改善のみならず経済的な安定性の礎になると発表。

⑥   ヒロミチ・ナゴ(ハワイ)「”元気アラワイ・プロジェクト”素晴らしい5年間の取り組み」

ワイキキの観光地にある全長3.2㎞のアラワイ運河の汚染対策にEM元気ボール(EM団子)が活躍。2019年に学生や教師、地域住民に呼びかけてEM元気ボール5万個からスタートし、2026年までに30万個のEM元気ボールを投入して遊泳(現在は禁止)や魚釣りができることを目指している。元気ボールは、2004年当時道頓堀川の水質浄化を中心とした大阪湾再生環境浄化に取り組んでいた大阪湾漁協組合関係者らがハワイを訪れた際にナゴさんを通して現地の団体と交流しことがきっかけでネーミングした。2024年8月からはEM活性液を毎週投入。現在100以上の企業や団体、幼稚園から大学までの40校以上がコラボしている。当プロジェクトはタヒチやハワイ島へも拡大。日本でも羽田空港ビルグループが支援、観光客がハワイを訪れた際に「再生型観光」と称して、ナゴさんたちの活動に参加するなど先進的なエコツーリズムの事例として注目を集めている。
<参考>第200回 EMで社会的機能を構築したハワイのアラワイ運河の浄化活動|新・夢に生きる

⑦   ヒア・フイ・チン博士(マレーシア)「EMを活用したゼロウエイストの街づくり」

2011年に建築プロジェクトがスタート、建物にEMを入れることで建物の温度が1~2℃下がることが検証されている。EMinSuteraMall(ステラモール)は住居型ショッピングモールでトイレ、フロアの清掃作業でEMを散布し空間環境を整えていることや、レストランや家庭からでる食品残渣を堆肥化し廃棄物ゼロのコミュニティを実現。2014年に環境協議会から環境功績賞を贈られた。

発表者それぞれに温かい拍手がおくられた事例報告会
海外からの参加者には同時通訳で情報が共有された
懇親会で自国のEM活動をアピールする海外からの参加者

 

北中城村に「EMユニバーサルビレッジ」の拠点
官産協働で持続可能な農業と地域経済の活性化へ

沖縄県・北中城村が進める「農を活かした健康・福祉の里づくり」事業に2022年12月から第1段階整備事業者として参画している(株)EM研究機構(比嘉新代表取締役社長・本社:北中城村)は、全国で2例目となる地域再生推進法人の認可を内閣府から受け、村と締結した「持続可能な地域づくりに関する推進事業連携協定」に基づき「北中城村EMユニバーサルビレッジプロジェクト」を展開しています。

その第1段階として2024年11月、同村荻道にバイオガス発電、水耕栽培、農業設備等を備えた「EMユニバーサルビレッジ」が完成したのでEM国際会議の2日目に希望者の現地視察ツアーが行われました。比嘉教授は1日目の講演で「この予算の80%は国の支援によるもので、次年度から第2段階のプロジェクトを進めることになっています。EM技術の総合的な展示場として機能するように準備を進めています」話されました。

バイオガスプラントで回収してきた生ごみがバイオガス発電されるまでの説明を聞く視察ツアー参加者ら

「バイオガス発電」に関して

バイオガス発電プラントは、水と生ごみを1:1で混合した後、幾つかの段階を経てバイオガス発生タンクへ移行して発電する仕組みで、各段階でEM技術を組み込んだ独自の設計になっていました。通常バイオガスプラントでは浄化槽とセットになっていますが、消化液の上澄みの液を生ごみと混ぜることによって浄化槽が不要な設計になっています。出てきた消化液を見せていただきましたが、ニオイは全くありません。また、消化液の固形部を米ぬかと混合したボカシをサンプルとしていただきましたが、非常に良質なものでした。

消化液の残渣は、隣接するハウスの菜園スペースで再利用されていました。ハウスでは、ジャガールという粘土質の土壌でトマトの不耕起栽培が行われていて、健全に育っているトマトを見ることが出来ました。


<バイオマス発電のスペック>
製造スペック
最大 通常運用時
発電量 470kWh /日 200kWh /日
肥料製造量 4.3t /週 2.9t /週
消化液排出量 3.4m3/日 2.3m3
液肥製造量 1.8m/週 1.8/日/週
リサイクル水製造量 8.0m/週 8.0m3/週
EM 培養量 12t/月 6t/月
設備スペック
ごみ破砕分別機 2t /時
酸生成槽 10m3 滞留時間2.3 日
メタン発酵槽 40m3 滞留時間11 日
リサイクルユニット 13m3 滞留時間2.2 日
圧搾機 1.6t /日 1 回400kg
乾燥機 1.5t /日

 

消化液を施用しているトマトハウス
<左>消化液のアップ写真、<右>消化液の残渣と米ヌカを混合したボカシ

 

文責:鹿島・津曲・今村