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サツマイモ農家も実感!EMバイオ炭の効果

こんにちは、EM研究所の今村です。
今回はEM農家さんに協力していただいて行なった、EMバイオ炭について検証した実験の結果を公開します。

EMバイオ炭とは

まず、バイオ炭(Biochar)とは、「生物の活性化及び環境の改善に効果のある炭化物で、生物資源を材料とするもの」と規定されています。(参照:日本バイオ炭普及会
そのバイオ炭を作る際、EM活性液で消火してEMをしみこませて作った炭のことを「EMバイオ炭」といいます。

高機能のバイオ炭「EMグラビトロン炭」

皆さんご存じのとおり、比嘉教授は最新の整流結界技術を取り入れた高波動・高機能のバイオ炭「EMグラビトロン※ 炭」を開発しました。グラビトロンとは、最新のEM技術「EM重力子(グラビトン)技術」から生まれた造語。

この炭は、岩手県内の間伐材や流木、伐根などの天然木を利用しています。それらを粉砕し、EM整流技術やEM(乳酸菌や酵母、光合成細菌)を活用したEMグラビトロン炭化システムで低温焼成して作られた、100%自然由来の木炭(バイオ炭)です。

この炭は有機JAS別表1適合資材に登録されており、岩手コンポスト(株)で製造され、(株)EM研究機構から販売されています。

有機JAS適合のEM整流炭、EMグラビトロン炭

このEMグラビトロン炭は波動効果もさることながら、光合成細菌(EM・3)との相性が良く、育苗培土に添加することで育苗期間が終わった一ヶ月後にも内部に光合成細菌を生息させる効果があることが確認されています。この効果にはEMグループ全体が目指している発酵合成型土壌の実現につながる大きな可能性を感じました。

土壌消毒の壁とEMバイオ炭の効果検証

そこで、サツマイモの産地である茨城県の行方市でEMそだちのサツマイモを栽培している農家さんにご協力をいただいて、EMバイオ炭の効果を3年にわたって検証していただきました。

産地のサツマイモ農家は、「土壌消毒をしないと商品になる芋が栽培できない」と信じ込んでおり、EMそだちでありながら土壌消毒(クロロピクリン)を止められない状況でした。

加えて、この地域ではイノシシの害も頻発しており、「EM整流結界でイノシシの被害を抑えられるか」ということも重要な課題でした。初年度はサツマイモの栽培に炭を使用することと併せてイノシシの害も減らせるかどうか、整流結界も施して実験していただきました。

2020年の取り組みと結果

この年は1反5畝の畑の5列のみ土壌消毒をせず、苗の定植後の畝間にEMの施用と併せてEMバイオ炭を施用していただきました。

この年に使用したEMバイオ炭は、農家さんが所属する組合が無煙炭化器で作った竹炭にEMをたっぷりかけたものでした。

無煙炭化器で竹を焼いて炭を作る
竹炭にEM活性液をたっぷりかけて作ったEMバイオ炭

そして、畑の周りには以下の手順で整流結界を施しました。

  1. 炭・塩・整流ボトルを設置する

  2. 整流ボトルを埋設したところにポールを立てる

  3. 立てたポールすべてを線で結ぶようなイメージで畑の外周にEM活性液をまく

  4. 設置完了後の全景。整流ボトルを埋設してポールを立ててほ場を囲っている

その結果、土壌消毒をした方は内部にしっかりと芋ができていたのに対し、畝間にEMバイオ炭を施したほうは沢山の根がのびていても肝心の芋は細いものしか収穫できませんでした。

しかし、芋を取り除いた根の状態をみると、土壌消毒をした方はこじんまりしているのと対照的に、EMバイオ炭を施した方は自由奔放に根を伸ばしているように見られました。

 あいにく芋の収量への効果は散々な結果でしたが、サツマイモ栽培にEMバイオ炭を施用することは予想以上に生育に影響を与え、根を伸ばす効果があることを実感し、農家さんにもその効果を確認していただけました。

イノシシについては、収穫のために結界を外した途端に被害をこうむりましたが、生育期間中は無事でした。
農家さんにはEMによる整流結界の害獣対策に手応えを感じていただけたと思います。

2021年の取り組みと結果

2021年は前年度の経験を生かし、根の周りにEMバイオ炭が確実に在るよう、マルチャーでマルチを張る前に畝を立てるところに筋でEMバイオ炭を施し、EM活性液をかけて畝作りをしました。そして栽培中も塩入EM活性液EM・3Sを葉面散布していただきました。

結果は、EMバイオ炭を施用した畝も土壌消毒をした畝も、サツマイモの肌がきれいで、農家さんが恐れていた肌が汚い芋にはならず収穫することができました。

芋のなりはEMバイオ炭の施用した方が小さいながらも比較的大きさが揃っている状態でした。

この結果から、実践した農家さんには土壌消毒なしでもEM炭を活用して芋の栽培が可能だという実感を得て頂いたと思います。

2022年の取り組みと結果

2022年は、組合で焼いたEMバイオ炭ではなく、EMグラビトロン整流炭を使用して一枚の畑(約10a)全体で栽培を行っていただきました。

前年と同じようにマルチャーで畝立てする前に炭400リットルとEM活性液を400リットルずつ筋状に施用して、サツマイモの根のそばにEMグラビトロン整流炭とEM活性液が在るように畝を準備していただきました。

この年は昨年同様夏場に雨が少なく、他のサツマイモ畑では生育が不順でしたが、EMグラビトロン整流炭を施した圃場は、順調に生育していました。

結果、芋は大きさが揃い、きれいな肌の芋が収穫できました。収量は約3.5tと申し分なく、味にうるさいおばあさんにも、「この芋は美味しい」と評価していただいたようです。

 今までEMボカシとEM活性液の施用だけでは土壌病害やセンチュウの被害をなかなか解決できませんでした。しかし今回の取り組みの結果から、例年のEM施用方法にEMバイオ炭(EMグラビトロン整流炭)を併用すれば土壌消毒をしなくても収量を確保しつつ肌のきれいなサツマイモを栽培できる可能性を見いだすことができました。

 

EMバイオ炭を使用した3年間のまとめ

2020年から3年間続けていただいたEMバイオ炭の施用結果について、以下のようにまとめました。
EM資材については、どの年も栽培中に最低3回は施用してくださっています。

この実験で炭と併用したEMは、EM活性液ですが、EM・1原液を薄めて使用した場合でも効果は同様です。

  • 1反5畝の畑の5列のみ土壌消毒をせず、苗の定植後の畝間にEMの施用と併せてEMバイオ炭を施用。
  • 畑の周りには結界を設置。

  • 畝間にEMバイオ炭を施した方は、沢山の根が自由奔放に根を伸ばしていた
  • 細い芋しか収穫できず。

 

  • マルチャーで畝立てをする前にマルチを張る所に筋でEMバイオ炭を施し、EM活性液をかけて畝作り。
  • 栽培中は塩入EM活性液とEM・3Sを葉面散布。

  • EMバイオ炭を施用した畝も土壌消毒をした畝も、肌がきれいなサツマイモ。
  • EMバイオ炭を施用した方は小さいが比較的大きさが揃っていた。

 

  • 組合で焼いた整流炭ではなくEMグラビトロン炭を使用。
  • マルチャーで畝立てする前にEMグラビトロン炭400リットルとEM活性液を400リットルずつ筋状に施用。
  • サツマイモの根のそばにEMグラビトロン炭とEM活性液が在るように畝を準備。

  • 夏場に雨が少なく、他のサツマイモ畑では生育が不順だったが、炭を施した圃場は生育順調。
  • 大きさが揃ったきれいな肌の芋が収穫できた。
  • 収量は約3.5t。

 

バイオ炭とEMの併用で持続可能な農業を

農林水産省が推し進める「みどりの食料システム戦略」は、持続可能な農業を目指し、環境負荷の低減や生産性の向上を図るための取り組みです。この取り組みの中では、炭素貯留を促進するためにバイオ炭の施用が勧められていますが、有用な微生物を添加した炭は炭素貯留以上の効果をもたらすと私は考えます。

比嘉教授は「自然の豊かさの役割を担っているのは微生物を中心とする土壌の生物多様性であり、地下に微生物を中心とするジャングルができると、地上部もジャングルになる。一般的に微生物といえば分解者と思われているが、光合成細菌や窒素固定菌、リン溶解菌をはじめ、生産者としての微生物も多数あり、この生産者的微生物と発酵力の強い微生物(酵母、乳酸菌)の組み合わせは養分を生み出す力を持っている」と述べています。

 今回のサツマイモ農家での取り組みから、バイオ炭とEM、特に光合成細菌との併用は今後のEM技術の根幹になると感じました。

皆さんもぜひお試しいただき、炭と光合成細菌の相乗効果を実感してみてください。


【参考】関連記事

<みどりの食料システム戦略トップページ│農林水産省>
https://www.maff.go.jp/j/kanbo/kankyo/seisaku/midori/#Midorisennryaku

<農地による炭素貯留について(PDF)│農林水産省>https://www.maff.go.jp/j/council/seisaku/kikaku/goudou/13/pdf/data3_3.pdf

<バイオ炭について│農林水産省>
https://www.maff.go.jp/j/kanbo/kankyo/seisaku/climate/jcredit/biochar/biochar.html