昨年12月からこれまで3回に渡って紹介してきましたEM栽培とJAS認証を得ている理想的な農家さん「那須高原農場スノ・ハウス」(以下スノ・ハウス)ですが、今回がその最終回になります。
そこで、特別にスノ・ハウスの作業の裏側を紹介させていただけることになりました。
客席から見えない裏側を舞台裏といいます。テレビ番組だったら許可をもらって撮影する、そんな特別な場所になります。スノ・ハウスの舞台裏では、収穫が終わってから出荷までの作業を見ることが出来たのですが、どの工程にも手加減がなく、有機JAS農家さんの奥深さを知ることができました。
この連載の中でもかねてより、野菜づくりは子育てに似ているとお話ししてきましたが、農家さんが野菜を出荷するときって「可愛い我が子をお嫁に出す」、そんな気分なのかなぁと思ったりします。
農家さんにある「調整室」ってなぁに?
農家さんが広大な畑で収穫作業をしている様子をテレビ等でご覧になったことがあると思います。でも、そのあとどのような工程で出荷されていくかを知らない方も多いでしょう。
言い換えれば私たちが出かけるときに身支度をするように、出荷(お出かけ)するために野菜たちを綺麗に洗って余分な下葉や根っこなどを切り落とし、袋詰めや箱詰など野菜の身支度をすることを「調整」と言い、「調整」するための場所を「調整室」と言います。
特にレタスは野菜の中でも鮮度が落ちやすく、収穫後は大忙しです。調整作業は時間がかかり、大変な手間がかかっているのです。
調整室は野菜を新鮮な状態で、できるだけ早く消費者のところへ届けるための大事な作業室なのです。
それでは、スノ・ハウスの収穫から出荷までの流れを見ていきましょう。
新鮮野菜を消費者に届ける工夫が
野菜は収穫された後も生きていくために呼吸や蒸散作用などで、消耗していきます。収穫されたレタスは直ちに大きな専用の保冷庫に入れて、急速に冷やします。低温にすることで消耗を抑えることができるのです。スノ・ハウスでは鮮度保持のため6度まで下げます。これを「予冷」といいます。その後洗浄をしてから袋詰めをします。
野菜によっては低温障害になるものや、トマトのように収穫されたあとも常温で追熟するものもあるので、調整をする行程は野菜によって異なります。
最後に野菜用のプラスチックフィルムの袋に入れます。包装することで、呼吸や蒸散を抑える効果があります。私も時々スノ・ハウスのレタスを購入しますが、家庭用冷蔵庫の中で2週間~3週間は鮮度を保つことができ、生命力に満たされた野菜だと実感します。
出荷の際は、要望があればSDGs仕様で簡易包装にも対応してくれます。
もちろん宅配はクール便です。
有機JASはすべて記録・管理されている
ここからはスノ・ハウスのさらにすごいところをお伝えしましょう。袋に貼ってある小さなシール。有機JAS認証の野菜にはJASマークが貼ってあります。このマークが貼られて、はじめて「有機野菜」と名乗れるわけです。
スノ・ハウスがすごいのは、さらにすべての野菜、レタスならすべての品種ごとにロットNoをシールに付けて管理しているところです。万が一クレームが来たら、どこのほ場で、どのよう作られたか、生産履歴をすべて管理しているのです。
有機JAS認証農家では、ほ場管理と行程管理は絶対に欠かせませんが、ロットNoをつける管理方法はとても複雑で難解な作業なので、JAS認証を取得していても、ここまで管理している有機農家は貴重です。
連載Part2の第11回でも触れましたが、有機JASは第三者機関の厳しい検査を受け認証されなければなりません。それも栽培する畑(ほ場)、種、苗や肥料、水やりなどの栽培管理、病害虫管理など審査対象も幅広く、そしてそれらを詳細に記録し提出することになります。
有機JASの認証を受けるには日々の農作業以外にも、徹底した管理や事務能力が求められます。
これからの日本の農業は・・
農業者の高齢化は深刻で、今後は離農・廃業をする農家さんが増えると言われています。その厳しい状況の中、スノ・ハウスは日比野さんから世代交代して、舘野さんご夫婦が第三者の形で事業を引き継いだ数少ない事例です。日本の自給率が少ないのはご存じだと思いますが、国内の農地の有機JAS取得率は0.3~0.5%と世界中どこを見ても驚くほど少ないのが現状です。環境に配慮して野菜を栽培される農家さんは私たちの食を支えてくれる貴重な存在です。さらに、この貴重な農家さんを支えるのは消費者である私たちの意識にかかっているのです。
お勧め!レタスを使った料理
◆ウチナー(沖縄)料理の「みそ汁」
沖縄の食堂では「みそ汁」と書かれたメニューをよく見かけます。
これが内地のみそ汁とは大違い。具だくさんのみそ汁をメインに食べる定食なのです。たくさんの具が入った、大きなどんぶりの中に必ず入っているのがレタスです。そして生卵が入っているのもお約束。
みそ汁にレタス、お勧めですよ。
◆スノ・ハウスのレタスとEM柴田農園のトマトのコラボ料理
タコスではなく、タコライスは沖縄のソウルフード!
我が家ではご飯の上にレタス・トマト・チーズ、そして牛挽肉でつくるスパイスが効いたタコミートをかけて食べる夏の定番メニューです。野菜がたっぷり食べられるので、夏バテ解消にもなるかもしれませんよ。
次回は・・・もうすぐ春ですねぇ~、農機具のメンテナンスのお話です。
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<PROFILE>
柴田和明(しばたかずあき) 会社退職後、約2年間栃木県農業大学校で農業を学び、その後トマト農家で1年間研修を受け就農。 柴田知子(しばたともこ) 会社退職後、東京農業大学(世田谷区)オープンキャンパスのカレッジ講座で野菜や果樹の育て方、スローフード、発酵などの講座を受講。EM柴田農園では、種まきから仮植、種取りなどの細やかな作業を担当。