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有機農業公開セミナー「食と農の未来を考える」

「食と農の未来を考える」をテーマに有機農業公開セミナーが、2月5日国学院大学5号館で行われ、農家や流通関係者、消費者など約200人が参加しました。有機農業推進法が施行されて10年。2018年に耕作面積の1%を有機農業にするという数値目標は、残念ながら達成されてはいませんが、有機農家をはじめ関係者の努力で、新規就農者の多くがいずれは有機農業をしたいというムーブメントも起こっています。こうした有機農業に関心のある人たちに情報提供や研修先や相談窓口になっているのが、主催したNPO法人有機農業参入促進協議会。18回目になるセミナーは、昨年、亡くなられた同会の山下一穂代表が企画したもの。「超自然農法」という新しい表現でもうひとつの農業と生き方を熱く語った、山下さんの遺志を継ぐ人たちの思いに溢れたセミナーになりました。

基調講演では、生源寺眞一福島大学教授(食料・農業・農村政策審議会会長・農業経済学)が「食と農の未来を考える」と題して、食料と農業の歴史、農政改革の争点、農村社会の価値など複眼的な視点で、日本農業を展望しました。農業は、基層の「農村コミュニティ」の上に「農業ビジネス」がある二層構造でできているとして、「基層」は市場経済(資本主義)になじまない部分だと解説。農業生産の新たな潮流として、第1に農産物の加工、販売、食事の提供など、食品産業の領域にウィングを広げる農業経営が活発化し、消費者に接近する流れができてきたこと。第2に非農家出身の若手新規就農者や中高年の新規就農者、企業やNPOなどの農業参入が加速化し、農村社会も多様化している。そこで新しいコミュニティをどうつくれるか、これが今後の農業の課題だと話しました。 (詳しくは、【 第18回有機農業公開セミナー 資料 】をご参照ください。)

第二部では、多彩な有機農業の担い手が事例発表を行いました。

有機のがっこう「土佐自然塾」を卒業し、山下農園で研修した千葉康伸さんは、緑肥作物を活用した省力、低コストの土づくりについて発表しました。千葉さんは、東京都出身、IT会社のエンジニアから農業に転身し、過疎化が進む中間山間地の神奈川県愛川町に新規就農して、8年目になります。圃場面積2.8ha、妻と研修生2人の4人で緑肥を主体とした土づくりを行い、少しでも通路が空いたら麦を撒くことで商品作物と一緒に炭素源を育てています。「販路を考えるよりもいい野菜を作れ」という師の山下一穂さんに従った結果、今では生協やレストランなどで人気野菜となり、売り上げは就農時の10倍になっています。
<NO-RA〜農楽〜(のーら)>
http://yuki-hajimeru.net/?post_type=training&p=8201

一方、石川県の井村辰二郎さんは、農家に生まれますが、大学卒業後は広告代理店に就職。その後、Uターンして家業を継ぎました。河北潟干拓地の重粘土の水はけの悪い耕作放棄地を毎年10haずつ開墾し、120haまで規模を拡大しました。米・麦・大豆・ソバなど有機で耕作し、ことに大豆は、国内産有機大豆12%(120t、ちなみに国内有機大豆生産量は1,000t)を生産しています。また、肥料製造から、加工商品の販売まで多角経営を行い、耕作放棄地を耕すことで、雇用をつくることに力を注いでいます。「食や農を地球規模で考えるにしても、まずは足元から変えていかなくてはなりません。有機栽培を標準化して、大規模でもできることを証明してみたい」と抱負を語りました。
<農産工房 金沢大地>http://www.k-daichi.com/guide/01/post_65.html

福島県二本松市のNPO法人『ゆうきの里東和ふるさとづくり協議会家』は、平成17年に高齢化で先の見えない不安をみんなで解決していこうと発足し、道の駅「ふくしま東和」を中心に有機を中心にした街づくりを推進しています。震災の甚大な影響を受けましたが、現在では「道の駅」の売り上げも復活し、研修、視察や、新規就農希望者が絶えません。同協議会理事長で農家レストランを営む武藤一夫さんは、「地域が存続できるかどうかという危機感から生まれた協議会だったが、会員がそれぞれの持ち味を生かして運営してきた。仲間がいるのは、どんな場面でも心強い。しかも、都会の人たちが、この地域で暮らしたいとやってくる。時代を先取りしていたのかな」と振り返り、農と食に地域再生の鍵があることを強調しました。
<道の駅 ふくしま東和> http://www.touwanosato.net/

名古屋中心部にある都市公園「オアシス21」のオーガニックファーマーズ朝市村は、今年で14年目になります。この朝市に参加できる条件は、オーガニック栽培で新規就農者あること、愛知県か愛知に接している県民であること、自分で栽培したものを自分で売れることなどで、参加農家軒数は約70軒(平均年齢41.8歳)で、一回の売上総額100万円から130万円になります。1日の顧客数は1,000人(年間53,000人)で、活気のある朝市となっています。この朝市は、就農希望者の相談所窓口があり、新規就農者の生活助成金申請機関となっていることです。その結果、過疎化が進む中山間地域に若い農家が移り住み人口増加を後押しすることにも貢献しています(岐阜県白川町は人口が0.5%増加)。主催する吉野隆子さん(オーガニックファーマーズ名古屋代表)は、「生産者同士で技術や情報を交換しあうので、品質がさらに上がり、飲食店、レストラン経営者なども訪れてマッチングの場ともなっている。なによりも、若い農家が消費者と交流することで、人間的にも成長していくのが手にとるようにわかり、うれしい。とにかく、新規就農したい人は、どんなことでも相談に来て欲しい」と話しました。
<オーガニックファーマーズ朝市村>
http://www.asaichimura.com/

生源寺教授は、「有機農業者は、記録、写真、栽培歴が整備されており、エビデンスが蓄積されている。機械化、効率化にも工夫がされ、労働生産性と有機農業の組み合わせの妙がかつての「有機農業は別世界」の時代から、研究、学問の分野としての価値がある」と語り、ことに有機農家のコミュニュケーション能力を高く評価しました。パネルデッカションでコーデネイターをつとめた大江正章さん(コモンズ代表)は、兵庫県が有機農業をテーマにしたシンポジウムを開催することや、千葉県いすみ市が学校給食に有機米を採用すること、さらに中山間地への若者の就農希望が多くなっていることなどを上げて、持続可能な「もうひとつの農業」が、確実に求められていると総括しました。

文責:小野田

(2018年4月7日)

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