連載



EnglishEM研究機構英語サイト

EMとマイクロバイオーム「細菌叢(そう)」

今から22年前に農文協から「微生物の農業利用と環境保全」という本を出しました。この本は農業の専門書としては異例で10万部あまり、25刷あまりとなり、今でも販売されています。世界初の複合微生物のマルチ的な活用法について書いたものですが、この中で微生物相(叢)による土壌の分類を提案しています。

すなわち、土壌は微生物相によって、その能力が決まるという主張です。当時はEM関係者を除くとまったく信用してもらえず、人為的に増殖した微生物を土壌に施用しても、土壌に、もともと住み着いている微生物が圧倒的に多いため、効果がないということが常識となっていました。したがって、この本は学者や研究者からは、不審の目で見られたのに対し、現場の農家や微生物の活用をチャレンジする人々にとっては、バイブル的存在として活用されてきました。

20余年も経過した今日、この本はいろいろな国で出版され、微生物相のコントロールは極めて重要であるという認識が高まっています。私は農業のみならず、地球上に存在するすべてのものは、それに接する微生物に支配されること、すなわち、微生物相によって機能性のレベルが異なることを力説してきました。

この本の最も特徴的なことは、土壌の能力は、その土壌で活動している微生物の種類と密度によって決まるということです。特に発酵・合成型の微生物の密度を高めることによって、収量や品質が従来の常識を越える多収で高品質という限界突破が可能であり、化学肥料や農薬は不要となり、不耕起も可能になるということです。

EMは、土壌の微生物相を望ましい方向に誘導し、強化する力があり、空気や水のごとくEMを使うことで、極めて短期間に限界突破が可能であることは改めて述べるまでもありません。その指標となるのが微生物相によって土壌の性質がまったく異なることを十分に理解する必要があります。要約すると以下のとおりです。

PROFILE
ひが・てるお/1941年沖縄県生まれ。EMの開発者。琉球大学名誉教授。名桜大学国際EM技術センター所長。アジア・太平洋自然農業ネットワーク会長、(公財)自然農法国際研究開発センター評議員、(公財)日本花の会評議員、NPO法人地球環境・共生ネットワーク理事長、農水省・国土交通省提唱「全国花のまちづくりコンクール」審査委員長(平成3年〜平成28年)。著書に「新・地球を救う大変革」「地球を救う大変革①②③」「甦る未来」(サンマーク出版)、「EM医学革命」「新世紀EM環境革命」(綜合ユニコム)、「微生物の農業利用と環境保全」(農文協)など。


1.腐敗型土壌(病原型土壌)

腐敗性の微生物が優占し、病害虫が多発する土壌。特に未分解の有機物を施用すると病害虫が多発するため、農薬や化学肥料、土壌消毒などが不可欠で、現在の日本の農地の95%以上が腐敗型土壌である。

2.浄菌型土壌(病原抑制型土壌)

広葉樹林の腐葉土など蛍光性の放線菌やトリコデルマなど、種々の抗菌微生物が優占している土壌で、病気になった苗を植えても病気が治る土壌。完熟堆肥を長年にわたって使い続けている有機農業農家の病害虫の発生しない土壌だが、多量の有機物を完熟させ施用するため、資材、労力的に限界がある。

3.発酵型土壌

乳酸菌や酵母など発酵性の微生物が優占する土壌。あらゆる有機物を発酵分解し、可溶化(植物に吸収される状態)するため、病害虫も激減し、収量も増大するが品質の面で(ミネラル、ビタミン、糖など)工夫が必要である。自然界ではそのような土壌は例外的であるが、多種多様な発酵菌を施用することで実現することが可能である。

4.合成型土壌

病害虫もまったく発生せず、有機物を施用しなくても、自ら肥沃になる土壌。光合成細菌や窒素固定菌などの合成能力のある微生物が共生している土壌で、水田に例外的に存在する。品質は極めて高いが、収量は一般的なレベルよりやや良い程度である。

EMの活用は、自然界に発生するあらゆる有機物を、堆肥化することなく土壌に戻し、超多収・高品質の農産物をつくることを目標としています。そのためには、浄菌的能力が高く、発酵型土壌と合成型土壌の両者の長所を持った、すなわち発酵合成型土壌にするという考えで、人為的に高度な微生物相の管理をすることで、限界突破をするという概念が必要となってきます。

この概念に従って、EMを徹底して活用している人はほとんどおらず、従来の農業技術の中でEMを上手に使う工夫をしているのみです。仕方がないので私が自ら実践し、展示するようにチャレンジしています(於・植物のための青空宮殿)。

写真1

写真の1は基盤をコーラルで転圧し、その上に砂礫(されき)を敷いて固めた駐車場跡に、わずかに植穴を掘って、リーフレタスを植え付け、鶏ふんなどを表面にばらまいて、1uあたりEM活性液を1リットルくらい施用したもので、見事に育ちました。土の厚さは3cmもありませんが、植え替え時は5cm以上にもなっています。

写真2

写真2は同じ場所につくったインスタント花壇です。いずれもペットボトルで囲っていますが、4〜5本に1本の割でEM活性液を入れており、場の活性化に役立っています。

写真3

写真3は同じ駐車場跡につくったトマトと、その側のレタスです。トマトのベッドはブロックで囲み、砂を入れただけのものです。鶏ふんなどの有機物を上に置いて、EM活性液を10aあたりに換算すると1トンくらい施用しています。収量も味も抜群です。

写真4

写真4はかつて通路と排水場としていた場所を5〜10m耕してつくったキャベツです。モンシロチョウがまったく来ないので寂しがっています。

写真5

写真5は不耕起でさまざまな野菜が植えられている場所で、収穫と同時に苗を植え替えたり種をまいており、生態系を形成しています。

写真6

写真6は種取り用の母本となるコマツナです。

写真7

写真7はスタートしたばかりのサントウサイの連続栽培です。収穫した日に同じ場所に種をまいて、ボカシ(ペレット)や鶏ふんを追肥し、EMを50〜100倍にしてかん水がわりに施用します。

この実験農場では毎週60〜80人の人に野菜をプレゼントしていますが、植物工場並みに野菜が生産されています。収穫を除く管理はすべて私1人で行っています。まだ65点くらいですが、見学者は目からポロポロとウロコを落としています。

私にとっては当たり前、一般の人にとってはショッキングな特集が、昨年の日経サイエンスの10月号に出ました。「“特集”マイクロバイオーム─細菌に満ちた私─」というタイトルです。「人体には自身の細胞の10倍もの数の細菌が存在し、複雑な生態系を構築している。この生態系の異常が肥満や自己免疫疾患や、人間の健康状態や寿命などのあらゆる分野に支配的に関わり合っており、マイクロバイオーム(微生物叢〔相〕)の管理がすべてを決定すると言っても過言ではない」という内容になっています。

人体も自然もすべて微生物の海の中に生きており、その微生物のあり方ですべてが決まるということになりますが、現在のところ、EM技術以外に微生物相(マイクロバイオーム)を自在に管理できる手法はありません。改めてEMの重要性を再認識したいものです。

(2013年2月7日)

トップページ | EMとは? | 特集・レポート | 連載 | 投稿ひろば | 用語集 | FAQ | バックナンバー | EM情報室 | リンク集 | サイトマップ

Copyright (C) Eco Pure All Rights Reserved.